「あ、入ったな」
放物線を描いて飛んでいくボールを観ながら、東福岡の左サイドバック末永巧はそんなことを思っていたという。
1-1で迎えた延長前半4分、試合を決めるシュートは唐突に生まれた。ハーフウェイライン付近で末永がボールを持ってルックアップしたとき、もうそのイメージはできていた。「あ、やっぱり出ているな」。試合前に与えられた情報の通り、前掛かりのポジションを取っているGKを視界に捉えると、迷わず右足を振り抜いた。キックの強弱は「感覚で」。「僕はキックで負けたら勝てるところが何もないですから」と語るほど、こだわりを持って練習してきた一撃が、大激戦となったファイナルの行方を決定付けた。
ハイレベルな技術力はポゼッションプレーでも発揮された。アンカーを置いた[4-1-4-1]のシステムを採用する東福岡だが、2列目の4人はしばしば極端に前掛かりとなる。これだとアンカーが孤立し、ボール回しで相手から狙われることになりかねないが、それを助けるのが末永の仕事だった。アンカーの横へと積極的にポジションを取ってボールを引き出し、ビルドアップをサポート。円滑な攻撃に欠かせぬ役割を果たし続けた。
その上で、さらに猛然と攻め上がっていく。決勝ではゴールバーを直撃するミドルシュートも放つなど、ウイングに対して厳戒態勢を敷いてきた相手の守りの上を行くためのキーマンとして機能。CKのキッカーとしても脅威になり、さらには「守備は苦手なんです」と言いつつも、守りに入っても集中したプレーで敢闘した。東福岡の優勝を語る上で、末永の貢献は外せないものがあった。
(文=川端暁彦)