しっかりとマンマークにつく“街クラブ”レジスタFCの選手たち [写真]=川端暁彦
日本の街クラブが世界のビッグクラブに挑む。第2回目を迎えたジュニアサッカーワールドチャレンジは、今大会ならではの対決を実現させた。
「この試合をするためにここへ来た。引いて守っては何にも経験できない。前からボールに行って、それでもかわされるくらいの技術があるのか。そのときに、(選手が)どうするのか。そういう経験をさせてやりたい」
レジスタFCの金杉伸二代表は、そんな言葉でFCバルセロナとの準々決勝に向けた意気込みを語った。
埼玉県八潮市に拠点を置くレジスタFCは、2004年に創設された比較的歴史の浅いクラブだ。近年はメキメキと力をつけ、2012年にはダノンネーションズカップ日本大会を制覇し、世界大会にも出場。そこで準優勝という輝かしい実績も残している。今年も全日本少年サッカー大会でベスト4に残るなど、その力を示してきた。
バルセロナに対し、レジスタが採った策はオールコートでのマンツーマンプレス。スイーパーを置くマンツーマンではなくて、リアルマンツーマンである。相手のセンターFWに対応する選手も1枚。「誰かを余らせる守備では、前から行ったときに足りなくなる」(金杉代表)という戦術は、細かくパスをつなぐ相手に対して国内の戦いでは有効になるやり方でもあった。
金杉代表に誤算があったとすれば、バルセロナ側の対応だろうか。日本の育成年代では「王者、研究せず」のような文化があり、相手チームの情報を集めたり、対策を練ったりすることなく試合に臨む「美学」を持ったチームが少なからずある。特にポジションサッカーで主導権を握ることをモットーとするチームにありがちな傾向だ。だが、バルセロナは違った。
「事前にレジスタのゲームを観て分析させてもらった。マンマークでハイプレスに来ることは分かっていたので、選手たちには後ろからのビルドアップについて幾つかの方法を伝えていた。まず、ハイプレスに来る相手に対しては(相手DFの)後ろのスペースをいかに使うかだ」。マルセル・サンス・ナバーロ監督はそう断じた。
バルサと言えば、ショートパス。そこにこだわるチームという漠とした印象を抱くものだが、実際のところで彼らはシンプルなロングボール攻撃の可能性を決して捨てない。レジスタは結局、1本のロングパスからセンターFWに抜け出される形で先制点を献上。マーカーの高橋港斗は大会最強FWを単騎で抑えるという役割をよくこなしていたが、このシーンでは付き切れなかった。
ただ、バルサ側にとってもレジスタの抵抗の強さは驚きだったようだ。「彼らにとって経験したことのないシチュエーションだった。両サイドバックにまでハイプレスをかけてくる相手はまずいない。初めてのシチュエーションだったと思う」(ナバーロ監督)。得意のいなすようなポゼッションが機能不全に陥る時間帯もあり、3-0とリードした後でも終盤にかけてバタバタした印象すら残した。「あのような形で試合が終わるのは好ましくない」と語る指揮官は試合後、選手たちに苦言を呈したようである。
「(レジスタは)われわれのいるリーグに入っても中堅クラスの力はあると思う。あそこまでプレスをかけてくるチームはまずないので、こういう貴重な経験をさせてくれたことについてレジスタに感謝したい」
世界に冠たるビッグクラブの指揮官が、日本の街クラブに贈った言葉にはリップサービスの側面もあるだろう。ただ、試合内容を観る限り、本音も入っていたに違いない。
文=川端暁彦