バルセロナを相手に「らしさ」を出せなかった柏レイソルU-12 [写真]=川端暁彦
「選手はもう『今日にでも練習したい!』と思っているはずですよ」。柏レイソルの吉田達磨ダイレクターはそう言ってニコリと笑った。
8月31日、ジュニアサッカーワールドチャレンジは最終日を迎えた。この最終日はベスト4に残ったチームのみが準決勝、決勝(および3位決定戦)を戦う。前回王者のバルセロナに準決勝で挑んだのは、柏レイソルU-12。バルサと同じ志向のサッカーを志してU-18までの一貫指導を行っている、そんなクラブである。
ただ、現実は少々非情にも見えた。フィジカル面で劣るのはある程度想定内としても、ほとんどボールをつなげず、相手ゴールに迫ったシーンは数えるほどしか作れない。0-2というスコア以上の差を感じさせる敗北だった。「あのユニフォームにビビったという面も少なからずあるけれど、それ以上にしっかりボールを持つという(レイソルの)ベースの部分が出せなかった。ベースの積み上げが足りていないということを突き付けられた試合だった」(吉田ダイレクター)。
「日ごろやっていることが出せなかった。悔しい限りです」。渡辺毅監督も同意見だった。満員に近い西が丘という環境や相手のユニフォームが放つ威圧感など、雰囲気に気圧された部分があった点は認めつつも、「雰囲気に敗因を持って行ってはいけないと思っています」と言う。二人に共通したのは、やはり守備の部分よりも攻撃の部分で「レイソルらしさ」が表現できなかった点だ。吉田ダイレクターはこうも言う。
「『俺たちは何で勝てるのか?』というポイント、武器がある。バルセロナの選手ですら、それをあれだけ丁寧に、基本を守ってやっている。それをおろそかにしていては、ということ。少年サッカーからフットボールへと脱皮していく。そのための“分かりやすい気付き”がある試合だったし、すごく良い切っ掛けになると思う。国内の試合でちょっと上手いと思っていたらそうじゃなかったんだ、とね。趣味でサッカーを続けていくのか、プロとして生きていくのか。その分かれ道はこういうところにある」
柏レイソルU-12はバルセロナに敗れた。それも得意とするつもりだった「武器」を出すことすらできぬままに。ただ、それは永続的に敗れるという意味ではない。「ここからですよ。この試合は彼らの頭の中にきっと“残る”。それがこの先につながるんです」(吉田ダイレクター)。敗れたからこそ得られるモノもある。彼らの5年後、10年後。「育成という名のリベンジ」に期待したい。
文=川端暁彦