FOLLOW US

1カ月勝ちなし、エース離脱…専修大、苦しみの末に一丸で掴んだ4連覇/関東大学リーグ

2014.11.18

関東大学1部リーグ4連覇を達成した専修大 [写真]=内藤悠史

 関東大学1部リーグ最終節が15、16日に各地で開催され、味の素フィールド西が丘で行われた16日の第2試合では、専修大学と順天堂大学が対戦。勝てば優勝が決まる大一番を3-0の快勝で飾り、専修大が史上4校目の4連覇を達成した。

 勝利、そして優勝を告げる笛が鳴ると、歓喜の声が上がるとともに選手の目からは涙が溢れた。暫定2位で迎えた最終節。優勝するためには、引き分け以下の結果は許されなかった。計り知れない重圧がかかる中、「緊張していて、軒並み動きは悪かった。でも(内容が)悪いなりに、前半の早いタイミングでスローインから点を取ることができたのが非常に大きかった」と、源平貴久監督は振り返る。立ち上がりに均衡を破ってペースを掴み、後半にも持ち前の攻撃力を発揮して2得点を追加。さすが、王者と思わせる強さを見せつけた。

 苦しいシーズンだった。前期日程は、8勝2分け1敗の首位で終了。11試合で30得点とリーグ屈指の破壊力でリーグをけん引した。しかし、後期に入って急失速。開幕節の筑波大戦こそ1-0で制したものの、以降は2分け2敗と勝利から遠ざかることになる。副将DF北爪健吾(4年・前橋育英高校出身)は当時、「大学に来て連敗するのは初めて」と話していた。入学以降、勝利しか知らない選手たちにとっては初めて味わう時間。「貴重な経験をしていると捉えて、ポジティブにやっていくしかない」(DF北爪)と必死に前を向いていたが、結果が伴わず、チーム内で揉めたこともあったという。

 3位まで順位を落として迎えた10月。第17節の中央大戦で6-2と大勝すると、翌節の駒澤大戦でも前半だけで5得点を奪う。これで息を吹き返したかに思われたが、同試合の終了間際、FW仲川輝人(4年・川崎フロンターレU-18出身/横浜F・マリノス新加入内定)が相手選手のハードタックルを受けて負傷。右ひざに大けがを負って離脱を強いられ、残り4試合でエース不在という新たな困難に直面した。それでも一丸となって勝ち点を積み上げ、大混戦となった優勝争いに食らいつくと、前節の勝利で首位を奪回。最後は得失点差の勝負で明治大を上回り、頂点に立った。

 源平監督は「10番(仲川)がいないのは本当に大きかったが、他の選手が少しずつ成長したのが結果的には大きかった。例年になく今年が一番難しかった」と語る。2位に勝ち点差15をつけた昨季から、MF長澤和輝(現・ケルン)とMF下田北斗(現・ヴァンフォーレ甲府)らが抜けた。「(リーグ)ベストイレブンを見ればわかる通り、今年はあまりメジャーな選手がいない。例年以上に無名な選手が多くて、能力もそこまで高くない。チームでコツコツとやってきた」(源平監督)シーズンだ。GK福島春樹(3年・静岡学園高校出身)は「去年は試合をしていて、正直負ける気がしなかった。前線にタレントが揃っていて、その人たちに頼っていれば勝てたし、自分たちは何もしていない感じだった。今年はみんなが頑張らないといけなかった」と口を揃える。「断然、今年はしんどかった」(GK福島)。苦しみ抜いた先に、リーグ史上で約半世紀ぶりとなる4連覇を達成した。

 入学初年度からの4連覇で卒業。偉業を達成した4年生たちは、口々に安堵の言葉を並べた。値千金の先制点を挙げ、リーグ首位の13得点でMVPに輝いたFW前澤甲気(清水商業高校出身)は「なんで泣いたのかわからないくらいうれしくて、自然と涙が溢れた」と試合終了直後を振り返り、「いろいろな人からの応援の声や支えてくれる人たちに見てもらっているというプレッシャーもあった。その分、恩返しできたと思う」とコメント。DF北爪も噛み締めるように「勝てて良かった。本当に結果が出て良かった」と繰り返した。そして主将としてチームを支えたDF河津良一(作陽高校出身)は「一番苦しいシーズンだったと思う。勝てない1カ月もあったけど、チームとしての目標はブレなかったし、どんな時も前向きに取り組んだ成果だと思う。全員で勝ち取った優勝」と喜びを語った。

 そして4年生に共通していたのは、ピッチに立てない同期への思い。「個人的にはてる(仲川)と一緒に喜びたいという気持ちが…。その気持ちしかなかった。本当にチームが勝てたことが何より」(DF北爪)、「終わった後には一番に控え室に行って喜びを分かち合った」(FW前澤)。幾多の困難を乗り越えて、チーム一丸で掴み取った4連覇だ。

(取材・文=内藤悠史

By 内藤悠史

元サッカーキング編集部。育成年代や女子、国内サッカー、海外サッカーなど幅広く執筆。退職後はJリーグのクラブ広報に。

SHARE

SOCCERKING VIDEO