強化試合でゴールを決めた端山豪 [写真]=兼子愼一郎
文=濱野陽子
22日、味の素フィールド西が丘で、全日本大学選抜対ブリオベッカ浦安の強化試合(30分×4本)が行われた。今回はユニバーシアード代表のメンバー入りへの最後のアピールの場であり、選手にとってはプレッシャーも大きかった。その中でひと際存在感を発揮したのが、慶應義塾大4年の端山豪だ。昨年のタイ遠征を最後にしばらく全日本大学選抜に選ばれていなかった端山だが、今年3月のバルセロナ遠征より再び招集され、この日は1本目と3本目にトップ下でプレーした。
1本目では積極的にボールに絡みにいくものの、全体的に連係が取れず、決定機を作れないまま終了。しかし3本目では見違えるようなパフォーマンスを見せた。3本目の23分、ペナルティーエリア内でパスを受けた端山は、ゴール右寄りの位置から反転してシュート。コースを突いたシュートは逆サイドのネットに吸いこまれた。このゴールについて端山はこう語る。「パスを受けて、澤上竜二(大阪体育大)と和泉竜司(明治大)が2人とも走ったので最初はパスを考えたが、2人に相手DFが引きつけられて、自分の周りにスペースができたから反転してシュートを打つことにした。角度があまりなくて、入るか微妙だったけど、相手のDFがGKと重なり、GKの見えないところから打つことができた」
1本目と3本目では明らかに端山の動きが変わった。その理由を次のように分析する。「戦術的な部分と根本的な部分での問題が1本目にはあった。戦術的な面は、相手の両サイドが少し絞る形をとって、その中で自分たちがプレスを掛けきれず、またボランチが出てこないことで前にもいけない状況ができてしまった。そういう時にチーム全体で状況を改善できるような声掛けをする努力が必要だった。3本目では1、2本目を見たこともあり、守備の時にボランチが前に出てきてくれて自分たちも前に行きやすかった」
全日本大学選抜から離れた1年間で、端山のプレーが変わった。その自覚は本人にもある。「大学2年で急にFWにコンバートされた。その時は自分の中でのFW像があって、貪欲に攻めることを意識していた。長い間けがをしていたこともあり、忘れていたドリブルの感覚を取り戻すために、ドリブルを仕掛けることが多かった。だけど、今はもっとシンプルに考えるようになった。点を取る選手が生き残るし、得点に直結するプレーができる選手が上にいく。それを今すごく意識していて、ドリブルする必要のない時はしないし、ゴール前で自分で打てても、確実な選択肢があればそっちにする。自分一人でとは考えず、周りを生かしながらプレーすることを考えられるようになった」
この変化は苦悩から生まれた。「去年1年間、慶應で苦しんだ。いろいろなことしようとしすぎて、どツボにハマっていく感じがあった。点を取ること以外にも全部を自分がやらなきゃいけないと思っていた。でも、周りを信じてどんな形であっても、1点取って勝てばいいという考え方があることに気が付いた」。その変化が自身の成長につながり、そしてこの日のゴールにもつながった。
全日本大学選抜の神川明彦監督は言う。「昨年1年間のプレーを見ても、高いレベルにあると感じなかった。しばらく選抜を外していたが、今シーズンの関東選抜Bで非常に良いパフォーマンスを見せた。バルセロナでもやるべきことをやっていた。メンタリティー、フィジカル、技術が高いレベルに達したと思ったので再招集した」
メンバー入りへのアピールには成功した。そして関東リーグで2位につける慶應大でもチームを引っ張り、ここまで1ゴール2アシストをマーク。2013年には東京ヴェルディの特別指定選手としてプロの舞台も経験した大器が今、その才能を開花させようとしている。