文=川端暁彦 写真=兼子愼一郎
8月30日、『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ』は味の素フィールド西が丘での最終日を迎えて、4強が激突。スペインの強豪RCDエスパニョールによる初出場初優勝という形で閉幕を迎えた。
10時に始まった準決勝第1試合はFCバルセロナと東京都U-12(東京都小学生選抜)という昨年決勝の同カード。ボールを支配して試合もすることを企図するバルセロナに対し、局面での厳しい守備から逆襲を狙う東京という「まるで異なるスタイル」(バルセロナのセルジ監督)チーム同士の激突となった。
昨年の決勝では立ちあがりで受けに回ったことを反省していた東京・米原隆幸監督が重視していたのは「スタートダッシュ」。戦術的には「アンカーのところを徹底的に遮断し、センターバック間のパス交換もさせない」(同監督)と、まずバルセロナの自由なポゼッションを阻害することに重きを置いた。この狙いは奏功し、試合後のセルジ監督を「中盤の中央でプレーすることがすごく難しくなった」と嘆かせることになる。
先制点は早くも9分に生まれる。右MF石澤諒志(青梅新町FC)の強引なサイド突破からのシュートを相手GKが防いだこぼれ球に、MF柳生将太(葛西FC)が詰めた形。縦への突破からファーを狙った石澤の選択、ボランチの柳生が見せたゴール前への大胆な飛びだしといった個々の決断がうまく噛み合った見事なゴールだった。
ただ、バルセロナもこのままでは終わらない。後半から約半数のメンバーを入れ替えて、キーマンのMFシャビ・シモンズをアンカーからインサイドハーフに押しあげるなどポジションも変更。東京に対して厳しく圧力を加えていく。PK失敗など好機を逃すシーンも目立ったが、30分にはグラウンダーのクロスを受けた大会得点王のMFペラスが巧みなタッチでコースを作っての右足シュートを流しこんで、試合を振りだしに戻してみせた。
そして迎えたPK戦はMVPに輝くGK長田友輝(三菱養和巣鴨)の好守もあって東京が勝利。昨年のリベンジを果たし、バルセロナの3連覇を阻んだ。ただ、この激闘で決勝に残す余力はなくなってしまったかもしれない。米原監督が「切り替えさせるのが難しかった」と率直に語ったように、精神的にもバルサに勝った充実感の中で同日の決勝を迎えるというシチュエーションは厳しかった。
準決勝でU-12ベトナム代表を終了間際のゴールで破ってきていたエスパニョールは、粘り強い守備に特長のあるチーム。総じて東京が押しこむ流れとなったが、「相当に堅かった」(米原監督)という守りを崩すには至らず。後半に入ると、連戦の疲労がMF陣の足も止めた。結局、試合は0-0のまま終了。バルセロナを撃破した東京だったが、優勝には一歩届かず。堅い守りで東京の攻めを跳ね返したエスパニョールが、初出場初優勝を成し遂げて歓喜の歌声をあげることとなった。