U-18フィリピン代表に勝利したU-18日本代表 [写真]=佐藤博之
初戦のラオス戦から、スタメン総入れ替えを行ったU-18日本代表。
そこにはいろいろな思いがあった。「絶対に点を取らないといけないと思っていた」。試合後のミックスゾーンでFW吉平翼(大分トリニータU-18)は、試合の時と同じような鋭い視線のままで、こう言いきった。
初戦のラオス戦はベンチスタートだった。思うように得点できず、苦しむチームの中で、最後まで彼に声がかかることが無かった。試合後のミックスゾーン。彼は怒りを押し殺すかのように、口を真一文字に締め、険しい表情で一人バスに乗り込んだ。「これまではスタメンではなくても、『点を取るために』途中からでも使われてきた。でも、ラオス戦はそういう局面になっても使われなかったのは、自分の力不足」と語ったように、まだまだ周囲から信頼を掴みきっていない自分への怒りであった。信頼を掴むためにはゴールを奪うしか無い。彼は強烈な意志を持って、この試合に臨んだ。
「ゼロに抑えることに集中した」。GK廣末陸(青森山田高校)も思いは同じだった。大会直前に内転筋を負傷し、ラオス戦はベンチで見守った。「離脱する可能性もあったけど、トレーナーを始め、スタッフが全力で対処してくれた。だからこそ、絶対にゼロで抑えて応えたかった」と気迫を出せば、DF野田裕喜(大津高校)も「オーストラリアが6-0で勝っている相手だし、ラオスよりも力は下の相手なので、無失点だけでなく、全員でゴールに向かう姿勢を出さないといけないと思った」と、積極的なプレーを見せた。MF岩崎悠人(京都橘高校)も「決定機があったのに決められなかった。本当に悔しかったし、次は絶対に決めないといけない」と、途中出場したラオス戦で、GKとの一対一を外したシーンを口にし、強い決意を持って臨んだ。
結果は彼らが活躍を見せ、6-0の大勝だった。6分にはMF森島司(四日市中央工業高校)の右CKから、DF町田浩樹(鹿島アントラーズユース)がヘッドしたこぼれを、野田が素早く反応して押し込み先制点を挙げる。26分にはDF浦田樹(ジェフユナイテッド千葉)からの左CKを、ニアで吉平が頭で合わせて、追加点を挙げた。
後半、ラオス戦で躍動を見せたMF高木彰人に代えて、MF堂安律(ガンバ大阪ユース)を投入。堂安が最初は左で、途中から右MF岩崎とポジションを入れ替え、右から起点を作り出すと、69分に岩崎がペナルティーエリア内で倒されPKを獲得。これを自ら決めると、71分には堂安のフィードに抜け出し、冷静に5点目を挙げる。81分に途中出場のFW小川航基(桐光学園高校)が決めると、88分には吉平が決めて、6-0の完封勝利。初戦で味わった悔しさを、彼らは結果で示した。
だが、決して手放しで喜べる結果ではない。他にも決めるべき決定機は多くあったし、逆に全体の連携面では、ポジションが重なったり、相手の陣形を見て、組み立てようとする中盤と、前に行こうとするFWで、距離が空いてしまったりと、意思疎通ができていないシーンも多々あった。
最終戦の相手はオーストラリア。ここにもし敗れてしまうことがあると、一次予選通過さえ危うくなる。絶対に負けてはいけない(※引き分けだと突破がほぼ確実のため)大一番を前に、浮かれている時間はない。結果が出たからこそ、その内容にしっかりと目を向け、この2戦で得た教訓をオーストラリア戦で生かさないといけない。彼らはどう決意し、それをピッチ上で表現するのか。彼らの真価が問われる一戦となる。
文=安藤隆人