今年のチームを語る上で、欠かせないキーマンはFW野口竜彦、FW横澤航平、MF尾ノ上幸生のトリオだ。
野口と横澤の2トップは昨年度の選手権をピッチで経験しており、今年のチームの柱だったが、この2人を支える『黒子』が必要だった。その黒子こそ、ボランチの尾ノ上だった。
「昨年度の選手権はベンチ入りしたけど、見ているだけだった。本当に悔しかったし、自分たちの代でも一丸となってやろうと思った」とキャプテンに就任し、新チームがスタートしたが、春先から夏前までのチームの低迷時は自身としてもうまくいかずに苦しんだ。「うまくいかなかった。自分も悩んだ。でも、インターハイ予選に負けてからは、自分たちは強くないと自覚をして、一生懸命強くなるために積みあげていこうと思えた」(尾ノ上)
チームの浮上とともに、尾ノ上の存在感は際立っていく。「サポートとリスクマネジメントを強く意識するようになった。セカンドを拾ったり、相手に前向きに進入させないようにケアをするなど、やるべきことをきちんとやる」と、ボランチとして高い献身性を発揮するようになった。もともと正確なパスを得意としていただけに、守備力の向上はよりそのパスの効力を磨く結果となった。
高い位置でボールを奪えるようになり、横澤と野口に正確なパスを供給できるようになり、彼らの攻撃力を引きだすことができた。さらにこの2枚に積極的に絡んで、自らもゴールに迫れるようになった。
攻撃の活性化。それは『黒子』の尾ノ上の成長により、武器であった2トップが躍動し始めたことに起因する。選手権ではこのトライアングルに注目だ。
文・写真=安藤隆人