名門・青森山田高校で1トップを張る2年生FW鳴海彰人が、5-0で勝利した第94回全国高校サッカー選手権大会2回戦の聖和学園高校戦で4得点に絡む活躍を見せた。
開始早々の8分、左サイドをDF北城俊幸がワンツーで抜けだした瞬間、ゴール前のDFの前にポジションを取ると、北城のクロスに反応。ヘッドは当たり損ねたが、この動きにファーにいたDFも食いつかれ、その裏にいたFW豊島祐希がフリーになった。豊島は鳴海のヘッドが流れたボールに反応し、スライディングでゴールに押しこんだ。35分には右サイドDF原山海里のロングスローに反応し、縦に駆けあがると、相手が弾いたこぼれをスピードに乗った状態で拾い、ワンタッチで抜けだして、中央のスペースに走りこんだMF嵯峨理久にピンポイントクロス。これを嵯峨がダイレクトで押しこみ、追加点を奪った。
2-0で迎えた56分には、味方のクリアボールに反応し、ボールを受けた相手DFに猛プレス。相手のコントロールミスを誘って、右サイドでこぼれ球を拾った神谷優太からのカウンターが始まると、一気にゴール前のニアサイドに猛ダッシュ。神谷のパスを受けた途中出場のMF吉田開の折り返しに対し、背後で高橋壱晟がフリーとなっていることを確認して、DFを引きつけて受けるとみせかけてスルー。高橋が豪快に右足を振り抜いて、3点目を突き刺した。
こうなると欲しくなるのが、自身のゴール。3点目が決まる前の54分に神谷のスルーパスに完全に抜けだし、GKと一対一になっていたが、シュートは枠を捉えられなかった。「FWである以上、自分が決めないと申し訳が立たないと思っていた」と、ゴールに飢えていた彼に63分、待望の瞬間が訪れる。
自陣で北城がボールを奪うと、前線のスペースへ猛ダッシュ。すると北城のスルーパスに抜けだした神谷から、ダイレクトでラストパスが届く。またも完全なるGKと一対一。今度は落ち着いて右足で沈め、自身の選手権初ゴールを叩きだした。70分にDF岡西亨弥と交代し、役目を終えたが、1トップとしての責務を結果とともに残してみせた。
「大社高校戦は正直、緊張でガチガチで何もできなかった。その分、今日はチームに貢献したかった。僕の役割は攻撃だけでなく守備。守備をしっかりやらないと、後ろに多大な迷惑をかけてしまうんです」
前線から積極的なプレスを仕掛ける青森山田において、ファーストディフェンダーとなる鳴海がさぼったら、守備のスライドやアプローチがズレてしまう。守備のスイッチを入れる重要な役割を彼は担っている。この試合、彼は高い献身性をみせて、そのスイッチを入れ続け、攻撃では黒子役になりながらも、ゴール前には必ず顔を出し、『主役』となる瞬間を待ち続けた。3点を彼らしいプレーで演出し、4点目でようやくその時がやってきた。
「ゴールはすごくうれしかったです。でもチームの勝利が一番。自分で決めるのが一番いいのは当たり前だけど、つぶれて周りを活かすのも嫌じゃないんです」
青森山田の最前線として、文字どおり身体を張って貢献する背番号17。決して派手ではないが、その存在感は試合を重ねるごとに増している。
文=安藤隆人、写真=平山孝志