2年生守護神の選手権はベスト4で幕を閉じた。
青森山田のGK廣末陸は、今大会ずっと我慢のプレーをしていた。チームが劇的な勝ちあがりをしていく中、守備陣は初戦の大社戦で2失点、3回戦の桐光学園戦でも2失点と、攻撃力のあるチームに失点を喫し、準決勝の國學院久我山戦でも2失点。
5試合で6失点。この結果は守備陣にとって、到底納得いかない数字だ。「無失点試合が2試合しか無かった。もっと僕がコーチングでDFラインをコントロールできれば…。センターバックのマークの受け渡しは、このチームの課題でもあったのに、それを最後まで修正できなかった」と、2年生守護神は唇を噛んだ。
だが、だからといって廣末の出来が悪かったかというと、そうではなかった。彼はどの試合も必ず1本はビッグセーブを披露し、文字通り『レーザービーム』と呼ぶべき精度の高いキックで、会場を沸かせることも多かった。「去年は緊張でガチガチだった。でも、今年はどの試合でも平常心を保ってプレーすることができた」。
準決勝でも20分に國學院久我山の小林和樹が放ったミドルシュートを、右手一本で外に弾きだす。このシーン、最初は左手でセーブしにいこうとしたが、シュートの弾道が強烈で伸びてくることを感じ取ると、右手に切り替えてセーブ。シュートの軌道を見て、瞬時の判断で差しだす手を変えて、正確に軌道に入れて外に弾き返す。彼の高い技術を見せたシーンだった。27分の失点のシーンも、その直前の左CKが直接ゴールに飛んできたが、正確なパンチングで弾いていた。その後の展開で、ゴールを許してしまった。
1ー1になってから、彼の集中力はより高まった。41分には野村京平の強烈なヘッドがバーを叩いたこぼれ球に瞬時に反応。澁谷雅也が詰めにくるが、右足でブロックし、ボールを手に収めた。75分には名倉巧のスルーパスに反応し、鋭い出足からスライディングキックでクリア。安定したゴールキーピングを見せていた。
しかし、後半アディショナルタイム3分、右CKがファーに流れ、山本研の放ったミドルシュートには反応していたが、その手前で戸田佳佑にコースを変えられ、ボールがゴールに吸いこまれるのを眺めることしかできなかった。
「自分のやるべきことをやることはできた手応えはあるのですが、やっぱり失点をしている以上、僕は何も言えない。2つの失点のとき、自分は無抵抗だった。2つとも僕はボールを見ているだけだった。そこは僕の実力が足りないところ」。
失点を彼一人に責めることはできないし、不運な面も多々ある。しかし、そうであっても、すべてを『責任』と受け入れて、その度に強くなっていかないと優秀なGKにはなれない。そのことを彼はよくわかっているからこそ、6失点すべての責任を受け入れながらも、悔しさの中に希望を見いだしている。
「来年は今年を越える。もっと質を上げて、眺めていたシュートに反応して防げるようにしたい」。
来年度は最高学年を迎える廣末陸。ただ眺めることしかできなかったあの2本のシュートを心に刻んで、また来年、ここに帰ってくること誓い、埼玉スタジアムを後にした。
文=安藤隆人