練習に取り組む東福岡の選手たち
今年1月の全国高校サッカー選手権で、圧倒的な力を見せつけて優勝を果たした東福岡高校。優勝メンバーの児玉慎太郎、小田逸稀、藤川虎太朗、鍬先祐弥をはじめ、選手権を経験した高江麗央、田尻京太郎、三郎丸瑞基、佐藤凌我、福田湧矢がチームに残った。
世間の見方は「2年生が多い分、今年もいいだろう」。だが、連続して力を保持し、結果を残すことは難しい。ましてや今年は、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)3連覇、選手権2連覇という大きな期待がかかり、ちょっとやそっとの結果では周りは満足しない。多大なプレッシャーが彼らにのしかかる。
だが、そのプレッシャーの中で始動した新チームは早速、力があることを示してみせた。選手権決勝からわずか1週間後にスタートした福岡県高校サッカー新人大会では、順当に勝ちあがり、準決勝の東海大学付属第五高校戦、決勝の九州国際大学付属高校戦では延長戦を制して優勝。さらに、2月の九州高校サッカー新人大会でも、決勝で大津高校に1-0で勝利し、新チーム初のタイトルを獲得した。
選手たちに今年のチームについて聞くと、「昨年よりも個が強い」と異口同音する。キャプテンの中村健人(明治大学に進学)を中心に抜群のまとまりを見せていた昨年のチームに比べ、今年のチームは強烈な個性を持った選手がそろう。
「まとまりきれたら強いけど、それがないと逆に怖い」と鍬先が指摘をしたように、個の強いチームはいい時と悪い時の落差という『諸刃の剣』を持つ。それは中島賢星(横浜F・マリノス)と増山朝陽(ヴィッセル神戸)を擁した一昨年のチームが直面した問題でもあった。では、その落差をどう埋めるか。それは選手たちの意識にかかっている。
「僕たちの目標は『先輩たちを超える』こと。それを成し遂げるには、3冠(インターハイ、高円宮杯U-18サッカーリーグチャンピオンシップ、選手権)しかない」と児玉が語ったように、彼らは非常に高い目標を掲げた。この目標に対し、全員が同じ方向に目を向けて戦えるか。それが『諸刃の剣』をなくす重要な要素となる。
「3年生は少なかったけど、チームの軸になったのは、彼らだった。その軸が抜けたからこそ、今の2年生が早く軸にならないと厳しい戦いになる」と森重潤也監督が指摘をしたように、DFリーダーの児玉、アンカーの鍬先、藤川と高江のツーシャドーのセンターラインが、強固な軸となることが期待される。
「チーム、組織として勝つことを去年のチームから学んだ。一昨年の個のレベルが際立ったチームと、去年の要素が合わされば、一番いいと思った。今年はそういうチームにしたい」(森重監督)
「僕らは賢星くんたちの代に似ている。層が厚いけど、正直チームとしてまとまることは難しいところもある。個が強い分、一人ひとりが意識を持たないといけない。僕らは去年の団結力を知っているので、それを活かしていきたい」(高江)
インターハイ2連覇、選手権制覇の経験をフルに活かす。“赤い彗星”は今年も更なる進化を遂げて、全国を席巻する可能性を十分に秘めている。
文・写真=安藤隆人