明治大での開幕戦デビューを飾った佐藤亮[写真]=JUFA/REIKO IIJIMA
4月7日の明治大学入学式を前に、大物ルーキーが一足早く、大学生としてのスタートを切った。
2日に行われたJR東日本カップ2016 第90回関東大学サッカーリーグ戦1部第1節、慶應義塾大学戦の登録メンバー18人の中に、唯一の1年生、FC東京U-18出身のFW佐藤亮の名前があった。
高校時代は、高円宮杯U-18サッカーリーグ2015プレミアリーグEASTで、垣田裕暉(現鹿島アントラーズ)の12ゴール、神谷優太(現湘南ベルマーレ)の9ゴールを突き放す、16ゴールを挙げて得点王に輝いた。その実績が認められ、高校卒業後にはトップ昇格の選択肢もあったというが、「自分は体の線が細いので今のままではプロで通用しない。大学4年間で突き詰めて、プロに戻る約束をFC東京としました」と話す。そこで選んだ明治大進学の理由に、多くのプロサッカー選手を輩出していること、サッカースタイルの一致、レベルの高さを挙げた。
開幕戦、3点リードで迎えた73分、疲労の色が目立っていた道渕諒平に代わって、佐藤が投入された。「日々のトレーニングを献身的に取り組んでいて、チームのやりたいことをすぐに理解した。純粋に選ばれてメンバーに入った」と、明治大の栗田大輔監督は、ルーキーの起用について語った。
しかし、佐藤はデビューを果たした味の素フィールド西が丘で苦い経験をしていた。3月6日から9日にかけてのU-19日本代表候補トレーニングキャンプ。メンバーに選出された佐藤は、全日本大学選抜との練習試合に先発出場。この試合と同じ左サイドで起用されたが、自分の思うようなアピールができず、プロの舞台を経験している周りの選手との違いに戸惑ったという。「ポゼッション、動き方、守備の仕方、すべてが先を見据えて形作られていた」。結果、3月22日から行われたバーレーンU-19カップのメンバーには招集されず、悔しい思いをした。
その雪辱を果たすかのように、ピッチに入ると、ルーキーらしい活き活きとした動きを見せる。左サイドからのスタートとなったが、82分に渡辺悠雅が投入されると、ポジションを一列前に移して2トップの一角としてプレー。85分、左サイド前方でボールを受けると、マッチアップした溝渕雄志の股を抜いてドリブル突破。さらに直後の86分には、相手DFのバックパスを見逃さず、GKへ猛然とプレス。ボールを奪うことはできなかったが、自身の持ち味を発揮する。
試合終了間際の90分には、ペナルティーエリア内でボールを受けて、相手DFを背負いながら振り向きざまに右足シュート。ミートせず、GK上田朝都にキャッチされたが、短時間の出場でも必死にアピールを続けた。
「FWに変わった時は、結果を出すことだけを考えていた。また、前線からハードワークすることは自分の持ち味なので、そこも意識していた」。初出場初ゴールは叶わなかったものの、言葉どおりの働きぶりで、チームの完封勝利に貢献した。
高校時代には経験できなかった大学サッカーの屈強なDFとの対峙にも、「体を当てられない動きや、交わす動きをやってきた。どんな大きい選手が来ても、自分の得意なドリブルで交わしていければいい」と自信を口にした。
佐藤の大学生活はまだ始まったばかり。しかし目標は、明治大でのスタメン獲得にとどまらず、すでに2017 FIFA U-20ワールドカップ、そして2020年東京オリンピックにも目を向けている。大学進学という選択は吉と出るか凶と出るか、佐藤のサッカーキャリアを懸けた4年間にわたる戦いが今、始まった。
文=酒井伸