試合後、勝ちロコを踊る選手たち [写真]=西村健汰(同志社スポーツアトム)
前半から試合を支配する阪南大学に対し、同志社大学は守りを固めることなく、前から積極的にプレスをかけて対抗した。13分には、鶴崎光がサイドをえぐってクロス。ペナルティーエリア内で向井宏太がシュートを打つものの、わずかにバーの上へ。逆に35分には右サイドを崩され、阪南大主将の外山凌にネットを揺らされたが、判定はオフサイド。前半最大のチャンスは45分。中央約30メートルで得たFK、キッカーは松井修平。無回転のブレ球はGKの届かないコースを突いたものの、惜しくもバーに嫌われた。
そして、ゲームは後半開始早々に動いた。ペナルティーエリアやや外で鶴崎がボールを受けると、左足でシュート。ボールはサイドネットに吸いこまれ、同志社大が先制に成功した。リードを許して後がなくなった阪南大は、けが明けの全日本大学選抜MF重廣卓也を投入するなど、本気で点を取りにきた。それでも、GK白岡ティモシィを中心とした同志社大守備陣がシャットアウト。インカレ(アパマンショップPresents 平成27年度第64回全日本大学サッカー選手権大会)2位の攻撃陣にも臆することなく対応した。すると後半アディショナルタイムの90+2分、金潤求からのボールを受けた途中出場の岡村悠矢が目の覚めるようなボレーシュート。守備陣の踏ん張りに応えるかのようなビューティフルゴールが決まって勝負あり。格上相手に、勝ち点3以上に価値のある勝利を手にした。
「同志社はいいチームでしたよ。ハードワークをするし、プレッシャーをかけて奪ってからも早かった」(阪南大・須佐徹太郎監督)。百戦錬磨の敵将も同志社大の健闘をたたえた。阪南大は中心選手である山口一真、重廣卓也が負傷、外山凌が不調と、万全を喫することはできなかった。全日本大学選抜で活躍する2人をスタメンから欠いたのは大きな痛手となった。それでも、戦力的には関西でも抜きんでた存在だ。相手よりも走り、体を張り、気持ちでは一度たりとも負けなかった同志社大。松井主将の試合後の第一声は「マジでしんどかった」。この試合に懸けた想いは、この一言だけで伝わってきた。
この結果は偶然ではなく必然かもしれない。阪南大は昨季インカレ2位、さらにほとんどの主力が卒業しておらず、今季の優勝候補に挙げられている。対する同志社大は昇格組。今回の結果に、多くの関係者が裏切られた形となったはずだ。しかし、指揮官だけには、他とは違う予感があった。「開幕戦はどういう風にゲームに入るかが重要。試合前のアップから選手の動きや声掛けが前向きで建設的だったので、そういう意味では(勝利という結果に)驚きはない」。豊富なキャリアを誇る名将の鋭い勘が冴えわたった。また、選手たちはインカレ出場を目標とするものの、その舞台を知るものは一人もいない。だが、望月慎之監督は長い指導者人生でこのチームを全国へと何度も導いている。「4年生がリーダーシップをとってクラブの運営ができているチームはインカレ出場に限りなく近づいている」。経験に裏付けされた言葉は非常に重く、そして心強い。
高い壁を越えた先にあるのは、はるかに高い壁だ。2016年度 第94回 関西学生サッカーリーグ第2節の相手は関西学院大学。昨季4冠を達成した、名実ともに日本一のチームだ。今節も危なげない戦いぶりで大阪教育大学を2-0で下している。だが、勢いなら“歴史的大事件”を起こした同志社が上だろう。何よりも勢いが重要なリーグ戦。事件は1日では終わらない。残り21試合、もしかすると誰もが予想だにしない結果が待ち受けているのかもしれない。
文=西村健汰(同志社スポーツアトム)
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