11日から14日にかけて行われたSBSカップ国際ユースサッカー。40年の歴史を誇るこの大会に臨んだ“東京五輪世代”のU-19日本代表は、初戦でコスタリカに0-1と敗れると、静岡ユース(静岡県U-18選抜)との第2戦は1-1からのPK負け、そしてスロバキアとの最終戦も0-1で敗れて、全敗で大会を去ることになってしまった。
とはいえ、ある程度まで覚悟されていたメンバー構成ではあった。アジア1次予選(AFC U-19選手権2016予選)のメンバーはGK2枚とMF岩崎悠人(京都橘高校)の3人だけ。高卒1年目のFW吉平翼(大分トリニータ)とGK小島亨介(早稲田大学)を除いた15人は高校2、3年生で構成されており、実質的には年少のチームだった。さらに18人中9人が初招集で、DF濱大耀(コンサドーレ札幌U-18)、MF針谷岳晃(昌平高校)のように各年代を通じて初めての日の丸という選手もいたのだから、急造チーム感も強かった。
もちろん代表の看板を背負って戦うからには3戦3敗という結果にポジティブにはなれないし、試合内容もコスタリカとの初戦の途中までを除けば褒められたものではない。全体的に慎重なプレーが目立って、攻守でチャレンジが少なかったのも残念ではあった。「責任は私にある」と内山篤監督が力を込めたのも、覚悟の上だろう。
ただ、あくまで“投資”だったのも確かだ。「1回目がなければ、2回目もない。(10月のU-19アジア最終予選が行われる)バーレーンだけでなく、東京五輪のことも考えて選手に国際経験を積ませた」(内山監督)大会だった。そうした“種まき”の視点から言えば、初代表だった選手たちのプレーが目立ったのは収穫だろう。
中でも際だったのはボランチと左MFで起用された針谷だ。166センチの小兵ながら、フリーになってボールを引き出す戦術眼、左右両足を駆使する技巧、そして息を呑むようなパスで“初代表”のイメージを完全に凌駕。「サッカーを知っている」と指揮官も舌を巻いたように、効果的なプレーを連発して大会の中で攻撃の中心になってしまった。
ボランチとして起用されたDF原輝綺(市立船橋高校)も名を売った選手だろう。本人は「まだまだです。課題ばかり」と初めての代表で壁を感じたと言うが、この代表にあまりいなかった“潰せるボランチ”として確かな存在感。パスの精度に課題も残したが、縦への運動量も出してゴールに絡む意欲も見せた。左右サイドバック、センターバックもこなせるポリバレントな選手であることを思えば、最終予選メンバーに絡んでくる可能性まで示した大会だった。
“種まき”ではセンターバックの濱の名前が挙がるだろう。186センチの長身を活かしたヘディングが最大の武器だが、もう一つの味はチャレンジのマインドがあること。「行くところと行かないところの使い分けが課題」と本人も認めるように、何度か迂闊に「行って」しまう守備のミスがあったのだが、それでも消極的になることなく最後までアグレッシブに戦ってポジティブな印象を残した。最終予選にすぐ戦力となるのは難しいかもしれないが、奈良竜樹(川崎フロンターレ)ら札幌U-18の先輩センターバックにも通じる失敗を恐れぬマインドは将来性を感じさせるものだった。
主に高校生のテストを試みた今大会を経て、チームは8月末からの欧州遠征で最終的にチームを作り上げる。目指すは来年のU-20ワールドカップ、そして4年後の東京五輪である。
文=川端暁彦