駒澤大高の1年生CB齋藤我空 [写真]=岩井規征
第95回全国高校サッカー選手権大会・東京B決勝が12日に行われ、駒澤大高が2-0で帝京を破り、ベスト8進出を果たした前回大会に続き、全国行きを決めた。
駒澤大高は無失点での優勝となったが、そこには1年生CB齋藤我空の存在があった。1年生とは思えないクレバーさを持ち、落ち着いたカバーリングと背後のスペースへの対応が光る。
中学3年生の時、東京のクラブチーム『forza02』でプレーしていた齋藤の下には、都内外の名だたる強豪校からオファーが届いていた。しかし、「サッカースタイルが合うと思ったのと、あの大応援団の中でプレーをしたいと思った」と、総勢270人のサッカー部員を有する駒澤大高を選んだ。
駒澤大高の特徴として、ベンチ入りを果たせなかった選手たちがモチベーションを落とすことなく、ピッチに立つ仲間を全力でサポートをすることが挙げられる。スタンドをチームカラーの赤一色に染め、統率がとれた大声量の応援で仲間を鼓舞する。その迫力と熱は凄まじく、齋藤は「(昨年の選手権予選)都大会決勝を見て、選手権でも(2回戦の)尚志戦以外はすべてスタンドから見ました。本当に応援が凄くて、あの声の中でピッチに立ってプレーをしたいなと思いました」と、自身がスタンドで体感をしたことで、より強い魅力を感じたという。
そして、その夢は1年を経たないうちに叶った。東京B決勝の帝京戦。学校のすぐそばにある駒沢陸上競技場のスタンドは、サッカー部員だけでなく、全校応援で真っ赤に埋まった。
この大舞台で緊張をするかと思いきや、「試合前に3年生の先輩たちが、『緊張しないで楽しくやれ』と声を掛けてくれた。それで楽しめる気持ちになれた」と、立ち上がりから普段通りのプレーを披露。1‐0で迎えた後半、帝京の反撃に遭う中でも、3年生CB佐藤瑶太との安定したコンビネーションと、得意の裏への対応を見せ、最後までゴールを割らせなかった。
結果、後半アディショナルタイムに駒澤大高は追加点を奪い、2-0の勝利。チームは予選全4試合を無失点で切り抜け、連覇を成し遂げた。
無失点優勝の原動力となった1年生CBは試合後、「瑶太さんと、西田(直也)さんと武智(悠人)さんのダブルボランチが対人に強いので、僕はカバーに集中できた」と、先輩たちに感謝の意を伝えると、「あの真っ赤で、大声援の中でのプレーは本当に楽しかったし、気持ち良かったです」と、屈託の無い笑顔を見せた。
「選手権でもあの声援の中でプレーをしたいし、応援してくれる人たちのために持ち味を最大限に出したい。責任を感じますし、より自覚を持ってやっていきたいです」
夢を叶えた1年生CBは、これで満足をした訳ではない。さらなる渇望と責任、そして感謝の気持ちを持って、1年前にスタンドで見ていた選手権の大舞台に挑む決意を固めていた。
取材・文=安藤隆人