23回目の高校選手権出場となる高川学園 [写真]=安藤隆人
2年ぶりに高校選手権出場を決めた山口の名門・高川学園は23回目となる冬の全国挑戦となる。これまでの最高成績は2005年度と07年度のベスト4。これはもちろん校名変更前の多々良学園時代含めての成績となる。
名門を率いる32歳の若き熱血指揮官・江本孝監督が信念として持っているもの。それは“強い高川学園の復活”だ。
自身は校名変更前に多々良学園の主将として、中原貴之(現・アビスパ福岡)らとともに2002年度のインターハイ、選手権に出場。夏の舞台ではベスト4、選手権では初戦で優勝候補筆頭だった静岡学園を破る金星を挙げるなど、黄金期を支えた。2013年末に高川学園中学監督から、高校の監督に就任すると、「ボールを動かしながら、相手の隙を突いて行くサッカー」を掲げ、当時思うように県内で勝てなかったチームのテコ入れを行った。
実質監督就任1年目となった一昨年度はインターハイと選手権の両方に出場し、ともに2回戦まで勝ち進んだ。しかし、昨年は非常に苦しい1年だった。インターハイと選手権は、そろって予選決勝で敗れて出場権を逃し、今年に入っても、県新人戦こそ制するが、インターハイ予選決勝で西京にPK戦の末、敗れた。
今年のチームは全国的に見ても、十分に戦える力を持っている。加えて江本監督が中学時代から指導をしてきた高川学園中学出身の選手も多く、3年生は実に6年も苦楽をともにしてきた間柄である。それゆえに「何とか彼らに全国の舞台を経験させたいし、そこでかつてのようにオレンジのユニフォームが躍動するようにしたい」と、指揮官は情熱に溢れていた。
だが、結果がついてこない。この状況に江本監督はインターハイ予選後、すぐに動いた。「全国に出られないからこそ、選手たちに全国レベルはどういうものか、自分たちが戦うべき場所はどういうところかを忘れないでもらいたい」と、隣県の広島県で行われたインターハイをチーム全員で見に、バスを3往復させた。さらにインターハイ出場チームや、流通経済大柏の控えチームを学校のグラウンド、宿舎に招待し、ミニ合同合宿を組んで練習試合を積極的に行った。
「全国に出るチームではなく、全国で勝つチームになる。その意識だけは選手たちに持ってもらいたかった」と話す江本監督の想いは伝わった。「このままでは終わりたくない。絶対に全国で戦う姿を見せたい」と力強く話すエースストライカーの山本駿亮と伊石祐也のツートップ、攻守の要であるボランチの小林歩夢、CB田中綜太郎のセンターラインを軸に、チームはメキメキと力をつけた。
結果、選手権予選決勝では小野田工を相手に5-1の大勝を収めるなど、予選5試合で31得点1失点という圧倒的な力を見せつけて選手権出場権を手にした。江本監督は「1年間チームを作り上げて、この予選を突破したことで、選手たちに自信がついたし、逞しくなった。選手自身から何かを作り出そうという雰囲気を出してくれているので、全国が楽しみです」と、意欲をにじませる。
苦しい時間を耐え、必死で前を向いてきた山口の“オレンジ軍団”は、高いモチベーションと勢いを持って全国にやって来る。“強い高川学園の復活”を合言葉に。
取材・文=安藤隆人