東京都予選を制し、応援団を前で記念撮影 [[写真]=岩井規征
駒澤大学高校のサッカー部員は268名。男子生徒の約3分の1だという“マンモス部活”である。1998年からサッカー部の指揮を執る大野祥司監督は、そんな大所帯をまとめながら毎年タフなチームを作ってきた。現役時代は“武南の和製マラドーナ”として知られたテクニシャンながら、作り上げたスタイルは質実剛健。一人ひとりの献身性を重んじ、切り替えの速さと球際の激しさを売りとし、強豪ひしめく東京で着実に地位を築いてきた。
昨季は、そんな大野監督のチーム作りに明確な変化が見られた年だった。それまでのアプローチは3年生を主体とする、ある意味で高校サッカーらしいマネジメント。自身の経験も踏まえながら、頑張ってきた3年生を大切にすることでチームの求心力も作ってきた。だが、昨年からは「競争主義」の中で下級生を大幅に抜擢。先発の過半数が下級生になる試合も珍しくなくなり、激しい競争が行われるようになった。
大野監督は3年生の心情を思いやりつつも、「初めて選手権に出たときの経験が、次の代につながらなかった」ことも意識しながら、学年縦断型のチーム作りを貫いた。一方で、3年生を単に切り捨てることなく、Bチーム以下を各カテゴリーのリーグ戦へ細かくチーム参加。重層的なリーグの「どこかに居場所がある」状態を構築していった。アピールの場はあるわけで、当然ながらシーズンを戦う中でB・CチームからAチームへの突き上げも起きる。横の連帯ではなく縦に分厚い競争力のある集団を作ってきた。前回大会での8強入りは、その一つの成果だ。
経験の継承という意味では、GK鈴木怜、MF栗原信一郎、FW矢崎一輝に加えて、DF高橋勇夢、西田直也、佐藤瑶大、村上哲と前年度の4バックがそのまま残っているのは大きい。ただ、継続とマンネリは紙一重でもあり、大野監督は1年生CBの齋藤我空をレギュラーに抜擢するなど、ここにも競争関係を持ち込んで強化を図ってきた。
インターハイこそ予選敗退となったものの、6月には関東高校大会を制し、選手権都予選は無失点優勝。個々のタレント性と選手層の厚み、そして経験値を兼ね備えたチームに仕上がった。前回大会を超える4強の候補に挙がるのはもちろんのこと、その上も狙える確かな地力を持ったチームである。
取材・文=川端暁彦
By 川端暁彦