京都橘のもう一人の攻撃のキーマン堤原翼 [写真]=川端暁彦
今大会最注目選手であるU-19日本代表FW岩崎悠人を擁する京都橘高校――。
第95回全国高校サッカー選手権大会が近づき、各媒体で京都橘がフォーカスされる機会は増えたが、どうしても一人のストライカーに耳目は集中してしまう。Jクラブの争奪戦の末、地元・京都サンガF.C.へ進むタレントが注目されるのは仕方ない。ただ、「岩崎だけ」のチームでは決してないことも確かだ。
初戦でぶつかる市立船橋の朝岡隆蔵監督は京都橘の試合映像を観ながら「なんだ、もう一人怪物がいるじゃないか」と思ったと言う。岩崎と“怪物コンビ”を形成する“もう一人の怪物”の名は堤原翼。強烈な推進力と運動能力、ゴールへのどん欲な姿勢を兼ね備えたアタッカーだ。
左のワイドハーフ、あるいは岩崎と2トップを組むことになりそうだが、どちらの位置で出てきても第一に意識しているのはゴール。相手のDF陣は岩崎を徹底マークしてくるだけに、この堤原の仕掛けが京都橘の生命線となることも珍しくない。昨年の高円宮杯プレミアリーグで対戦したJユース各チームの監督たちも一目置いていたのも印象的だったが、これから対戦予定の敵将も「11番」に警戒を深めている。
インターハイでは守備面、特に高さへの不安を露呈してしまったが、大型DF清水駿がたくましく成長したこともあり、大きな弱点とは言えなくなった。1年生から最後の砦を務めるGK矢田貝壮貴を含め、しっかり守って速く攻める「京都橘の伝統的なスタイル」(岩崎)に磨きが掛かってきた。期待のルーキーFW篠永雄大やセンスあふれるプレーを見せる2年生10番のMF梅津凌岳など攻撃陣のタレント性は高い。
1回戦の相手である市立船橋はインターハイ王者であり、紛れもなく今大会の優勝候補。高校サッカーのレベルを突き抜けた完成度を持ったチームだ。ただ、「ボールを持たれる展開になるとは思っている」と語る智将・米澤一成監督が無策で市立船橋に挑むとも思えず、周到な準備を巡らしてくるはず。岩崎と堤原の“怪物コンビ”をどう生かして夏の王者に勝ち切るか。しびれる試合の予感が早くも濃厚に漂っている。
取材・文=川端暁彦
By 川端暁彦