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滝川第二、初の選手出身監督へ3年生から初勝利のプレゼント

2017.01.01

滝川第二は秋田商を下して2回戦進出を決めた [写真]=兼子愼一郎

取材・文=本田好伸(提供:ストライカーデラックス編集部)

 2年ぶり19回目の出場となった滝川第二が幸先良く1回戦を突破。最初のビッグチャンスを作ったのは秋田商だった。右サイドからのクロスをファーサイドでフリーで受けた伊藤颯がシュートを放つと、これは滝川第二のGK樫野智哉が好セーブ。滝川第二は直後の8分、中央の持井響太のシュートがクロスバーに弾かれたところを山田裕也が頭で詰めて先制に成功する。すると30分、再び持井が左サイドでチャンスを作ると、縦パスを受けた山田のダイレクトのクロスに本田周作が合わせて滝川第二が追加点。一方の秋田商も、サイドチェンジを効果的に使ってチャンスを生み出したものの、決定的なシーンを生み出せない。最後は前線に人数を掛けて攻め込んだが及ばず、試合は2-0で滝川第二に軍配が上がった。

 2010年の第89回大会を制した滝川第二は、2年前の第93回大会限りで栫裕保監督が勇退。当時の松岡徹コーチが後任に指名された。松岡監督はかつて滝川第二でプレーし、2年生の時に出場した90年の第69回大会で、同校の選手権初勝利を経験した選手である。

 滝川第二で、母校出身選手が監督になったのは初めてのこと。そんな歴史を知る指揮官が率いて初めて臨んだ選手権の舞台は、監督にとっても選手にとっても特別なものだった。松岡監督は試合前、選手にこんなお願いをしたという。「選手でも初勝利、監督としても(選手権で)勝利することはなかなかないと思うので、3年生に『監督としての勝利をください』と」。今の3年生は、コーチという立場で接した1年生のときの選手であり、「彼らとの距離感も非常に近いところがあるし、そういう意味でも思い入れがある」。

 この試合は、そうした監督の思いもあって、3年生を中心に戦うことを決めていた。松岡監督は、「毎回、大会に向けてテーマを決めるが、今回は3年生の力で『東京で年を越そう」と話していた。そして、「途中出場した、今まで出られていなかったような選手がよくチームのために貢献してくれていた」と選手を労った。

 滝川第二はこの試合、監督の気持ちに呼応するかのように、先発に名を連ねた9名の3年生を中心に、盤石の戦いぶりを披露していた。特に先制点を決めた山田裕也は追加点もアシスト。松岡監督は、「山田は普段とは異なるポジションだったが、彼は偉大な先輩・岡崎(慎司)選手に憧れて、うちの9番を受け継いでいる。岡崎選手と同じように技術よりも泥臭いプレーでずっと得点を決めてくれている選手で、本当に努力を重ねてきたからこそ今回のような結果がある」と、その取り組みや献身性を称えた。

 選手も、監督に初勝利をプレゼントすることを誓っていた。2年前に1年生として唯一ピッチに立った経験を持つ持井響太は、「松岡先生には『おまえが周りに経験を伝えて、緊張しないように伝えてやるんだ。楽しんで勝ちにこだわろう』と言われていた」と明かすが、「でも、一番緊張していたのは松岡先生じゃないかな」と笑う。選手同士のミーティングでは、「母校出身で監督になったのも初めてで、それで選手権に勝つことは、全国的にも少ないことだと聞いていたから、『勝てるように全員で頑張ろう』と話していた」。

 滝川第二は選手層が厚く、主力を張れるような1、2年生も多い。そんな中でも持井は、「『3年生の力(が必要』と県大会からずっと言われてきたし、後半には普段は出場機会が少ない選手も入ってきて、そこでしっかりチームとしてプレーできたことは大きいし自信になった」と振り返る。選手たちは試合後、「(今日入っていたメンバーが)次の試合でベンチ外になったとしても全員で頑張ろう」と話したという。

「子どもたちと『(決勝が行われる)埼スタで勝つ』と意気込んできたが、今日のゲームではまだそこには程遠い。秋田商業の強さを感じたし、次はもっとボールを丁寧に扱うサッカーをして上を目指したい」(松岡監督)。果たして選手たちは、“母校出身監督で初の2勝目”、“母校出身監督で初の優勝”を指揮官にプレゼントできるだろうか。滝川第二の王座奪還の挑戦はまだ始まったばかりだ。

(試合後コメント)

滝川第二
松岡徹監督
今日は3年生がキーだった。普段とは違うスタメンだったが、「3年生の力で東京で年を越そう」という気持ちを込めて臨んだ。そしてそのとおり、先制点、追加点を取れて、今まで出ていなかったような途中出場の選手が非常によくチームのために貢献してくれた。選手権はやはり、最後は3年生の力。競争は激しく、特徴のある1年生、2年生がいるし、次の試合でメンバーに入ってくる可能性もあるが、今年は特に3年生がキーワードで、彼らの頑張りがなければここには立てていなかった。次も一戦一戦やって、上を目指したい。

10番 持井響太
「最初の15分が大切」ということを選手権の前から言われていて、この試合では立ち上がりから攻められるシーンが多かったが、そのチャンスの少ない時間帯の15分で1点を取れたことが大きかった。相手はかなりガツガツくるので個人的にはやりにくい相手だった。(2年前にはできなかった)初戦突破ができて良かったが、個人的には相手マークに耐え切れずにあまり良いプレーができなかったので、次はもっと結果にこだわって、2年前の雪辱を果たしたい。

秋田商
小林克監督
相手の県大会決勝のビデオを見て研究したが、攻撃の破壊力もあり、しっかりとした守備でゴール前が堅かったので、そこをこじ開けるのはなかなか難しい作業だろうと思っていた。立ち上がりにうちがビッグチャンスを作ったが、そこでしっかりと決め切れていれば、相手がバタつく時間も増えて、自分たちの時間をもう少し長くできたと思う。

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