角田(左)ら2年生が前橋育英の守備を支えている [写真]=梅月智史
第95回全国高校サッカー選手権大会2回戦、市立船橋と前橋育英のゲームはPK戦までもつれ込む接戦の末、前橋育英が市立船橋を下して3回戦進出を果たした。
勝利の要因となったのはアグレッシブな守備と、それを後方で支えた最終ラインの2年生カルテットだった。1回戦の京都橘戦では自陣から攻撃を組み立てた市立船橋に対して、前橋育英は前線からのプレッシングで対抗。FW飯島陸ら前線の選手がプレスの第一波としてスイッチを入れると、中盤も連動して相手の最終ラインに自由を与えない。ビルドアップでボールを前に運ばせず、ロングフィードも出し手に圧力をかけることで狙いと精度を低下させ、被シュート数をわずか1本に抑えて前半を終えている。後半は次第に運動量が低下しはじめて押し込まれる場面が増えたが、ゴール前をしっかり固めて失点は許さず、無失点で80分間を戦い抜いた。
何度も好セーブでピンチを救ったGK月田啓、パスコースを切り続けてセカンドボールも回収したMF大塚諒ら3年生の活躍も目立ったが、「めったに褒めないんだけどね」という山田監督はハーフタイムにDFラインを賞賛したという。「相手を潰しに行く、アグレッシブにボールを奪いにいけていた」(山田監督)というように、2年生だけで構成されている4バックが最終ラインを支えた。左足のフィードやカバーリングが得意な角田涼太朗と、空中戦と球際の強さが光る松田陸のセンターバックコンビは共に持ち味を発揮。相手のサイド攻撃が迫力を増した後半、左サイドバックの渡邊泰基はマッチアップした市立船橋のDF真瀬拓海のドリブルに懸命に喰らいつき、右サイドバックの後藤田亘輝も最後まで献身的なプレーを披露している。ボールは奪えなくともパスやクロスのコースを制限することで、「ゴール前のところで対応することができていた」(角田)。最後まで、集中力を切らすことがなかった。
角田と松田がコンビを組み始めたのは10月から。それまで松田は1部リーグ(Bチーム)でプレーしていたが「(Aチームが)プリンスリーグで4連敗した時期の紅白戦で目をつけてもらえて、その次の試合から出場しはじめました」と自身にとっての転機を振り返る。そこからチームは結果を出せるようになって自信を取り戻していった。松田が「僕はけっこう守備でチャレンジする方なので、カバーリングしてもらえるように連携を取っています」と話せば、角田も「連携は問題なくやれています。前の人たちに安心してもらえるような守備をしていきたい」と口にしている。前橋育英は前線からの積極的な守備を仕掛けているが、それが可能なのは最終ラインの耐久力があるからだ。主将のMF大塚諒は「2年生たちは試合に多く出ることで経験値も上がっていて、頼れる存在です。初戦は緊張していたけど、今日はそれもなく市船の攻撃陣を止めてくれました」と後輩たちへの信頼を口にしている。連動した守備が機能していても、試合の中ではDFだけでの対応を強いられる場面が必ず発生する。そこで突破を許さない守備力、そして後半に押し込まれた中でもゴール前で「視野を確保して、手や身体で相手を感じてマークする」(山田監督)という粘り強さが発揮された。
1回戦では馬場拓海の二発など3得点と攻撃陣が光り、この試合では守備が機能して優勝候補の市立船橋を撃破。攻守に充実感が漂うタイガー軍団の、今大会での飛躍を感じさせたゲームだった。
文=雨堤俊祐