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県総体1回戦負けを糧に…真のリーダーに生まれ変わった前橋育英の主将・大塚諒

2017.01.04

前橋育英のチームキャプテンを務める大塚 [写真]=岩井規征

取材・文=松尾祐希(提供:ストライカーデラックス編集部)

 試合が動いたのはキックオフ直後の前半2分。前橋育英はCKを獲得すると、高沢颯がゴール前に入れる。この流れから最後は角田涼太朗が押し込んで幸先よく先制点を奪った。しかし、リード後は決定力不足に泣かされ、決定機も作り出すがなかなか決め切れない。後半に入ると運動量が低下したため、前に行くことができなくなり遠野に攻め込まれる場面が多くなった。それでも、最後はGK月田啓を中心に虎の子の1点を死守。前橋育英は3年連続でベスト8進出を決めた。

「幸先よく点が取れたのはよかったのですが、追加点が取れなかったことが大きかった」という山田耕介監督の言葉に象徴されるように、この日の前橋育英はボールを支配しながら追加点を奪えなかった。特に後半は攻め切ることができず、何度も相手の速攻を浴びる展開。中盤以降は全体が間延びしたこともあって苦しい流れが続いたが、主将の大塚諒の存在がチームを救った。

 献身的なプレーが武器のボランチは身体を張った守りでチームのピンチを阻止。「昨日はあれだけ走っていたので」と指揮官が語るようにチーム全体の運動量は前日の2回戦・市立船橋戦と比べて大幅に低下したが、今できることを懸命にこなした姿は主将としてさすがだった。中でも象徴的だったのは後半30分過ぎの言葉だ。最終ラインと最前線の距離が離れてしまい、チーム全体で攻守の切り替えが遅くなっていた。これを見た大塚は「コンパクトに!」という指示で叱責。仲間に喝を入れ、残り10分絶対にやりきるぞという姿勢を自ら見せた。

 主将らしい言動でチームをけん引した大塚だが、元々はそういうリーダーシップを発揮できるタイプではなかった。そのためチーム史上初めて今年はチームキャプテンと部長という形で、サッカー面と私生活のまとめ役を分業制にすることを山田監督が決断。ピッチ外のことを取りまとめる部長には長澤昴輝が就任し、二頭体制でチームを引っ張って行く異例の事態に大塚は「自分が頼りなかったからかもしれない」と自責の念に駆られた。

 そんな大塚を変えるきっかけになったのが夏の全国高等学校総合体育大会の群馬県予選1回戦敗退だ。ここで敗北すると、自らの立ち振る舞いを精査。結果を残せなかったことを受け止め、チームキャプテンとして嫌われ役になってでも意見をいうことを心に誓った。すると、徐々に意見を言えるように自身は変貌。チームキャプテンとしてリーダーらしさが備わった。準々決勝の滝川第二戦も苦しいときにチームを鼓舞することを誓う。彼の一挙一動に次も注目だ。

(試合後コメント)

前橋育英
山田耕介監督
幸先よく点が取れたのはよかったのですが、追加点が取れなかったことが大きかった。ある程度、前半に点を取ってからいいリズムの時間帯があったのですが、そこで取ることができなかった。(取れなかった要因に関しては)もう少し出し手と受け手の関係とかクロス精度の質とか、入り方とかタイミングがよくなかった。やっぱりそういうところはもう1回確認しないといけない。(後半に足が止まったようにも見えたのですが)昨日の市立船橋戦であれだけ走っていたので、高校生は難しいなと改めて感じました。

3番 角田涼太朗
公式戦でゴールを決めたのはプリンスリーグの10節以来。(CKでは空中戦が)自分よりも強い人がいるので、ターゲットではない。だから、僕は中に詰める役割だった。(右足でのシュートは)そんなに得意ではないのですが、ゴール前で自分はフリーだったので大丈夫でした。(後半の守備に関しては)セカンドボールを拾えないことが続いたので、あれだけ拾われると裏に蹴られるのは分かる。そこは気をつけていたのですが、少し寄せが甘くなってしまって相手に上手くやられてしまったなと感じる。

遠野
長谷川仁監督
(後半は)2トップが点を決めて、勝ち上がってきたので今日は難しくなったかもしれない。2年生は悔しさとかを来年に生かして欲しいなと思っている。(後半の巻き返しに関しては)去年、東福岡に1回戦で3-0で敗れて、選手たち自身も全国で勝つためにどうするべきかを考えていた。練習の中でも取り組んできてくれたので、この試合ではやってきたことを体現しようという話をして、選手はやってくれたと思う。

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