リーグ戦では2試合連続先発出場をしている森岡 [写真]=平山孝志
ほぼ確実とまで言われていたジュビロ磐田のトップチームへの昇格は、目前でかなわなかった。悔しさを胸に秘めながら、DF森岡陸は法政大学で新たなスタートを切っている。
磐田U-18の注目株として将来を期待され、2年時からトップチームの練習やキャンプに参加。3年時の2016年には、トップチームの公式戦に出場できる2種登録選手となった。磐田のスタッフからは「このままやっていけば、トップに上がれる」と言葉を掛けてもらい、同年夏にはトップチームへの昇格が決まるはずだった。
しかし、当時のチーム状況が芳しくなかったことが、森岡の進路にも影響を与えた。
「ジュビロの成績があまり良くなくて、特に後ろが不安定だったので、即戦力の選手を獲得することになったと言われました。たぶんクラブはずっと僕をトップに上げるかどうか迷っていたと思うんですけど、9月頃には『やっぱりダメだ』と言われて、大学進学を決めました」
今の自分の力では、トップチームの即戦力にはなれない。チームが下した判断は理解できたし、森岡自身もその事実を痛感していた。
「悔しかったけど、正直『こんなレベルで上がれるのかな?』と思っていた部分もありました。ジュビロのトップチームの選手と比べたら体つきは全然違うし、メンタル面もまだまだ。トップの選手たちは自主練もすごくやるし、体の自己管理も徹底していて、試合に懸ける気持ちが僕とは全然違うなと感じていました。そういうころが自分には足りなかったと思います」
「ここから4年間頑張って、ジュビロに戻る」。そう誓ってスタートした法政大でのルーキーイヤーは、リーグ戦第2節で初出場。デビュー戦こそ61分に足がつって交代し、チームも敗れるなどほろ苦い出来となったが、続く第3節ではフル出場を果たし、チームの今季初勝利に貢献。昨季リーグ王者・明治大学の猛攻を何とか耐えしのぎ、試合後には「本当にうれしすぎて」と感極まって涙を流した。
永戸勝也(現ベガルタ仙台)や山田将之(現FC東京)らプロ選手を輩出してきた法政大の長山一也監督は、森岡について「新チームがスタートした時から一対一の粘り強さはチームで一番。体がすごく柔らかいので、ボールを絡め取ることができる」と高く評価する。「フィードの精度や根本的な体力はまだないので、そこを改善していけばすごく楽しみな選手」と伸びしろも十分だ。
明治大戦で何より印象的だったのが、1年生にもかかわらず大きなジェスチャーと声掛けでチームメイトを鼓舞する姿だった。「高校3年の時にキャプテンをやっていた経験があるので、1年生とか関係なく声を出して盛り上げられたらいいかなと思ってやっていた。それが勝利につながってよかった」。物怖じせず、堂々と振る舞う森岡のメンタリティーがチームに好影響を与えていることは間違いない。
目標の選手を問うと、磐田U-18時代に「同じ2番にした」と憧れるDFチアゴ・シウバ(パリSG)と、磐田で活躍するDF大井健太郎の名前を挙げた。
「大井選手は僕と同じくらいの身長だけど、声でみんなをまとめることができて、すごく安定している。そういう選手がジュビロに求められていると思うので、大学4年間でしっかりと身につけてジュビロに戻りたい」
もう一度、サックスブルーのユニフォームを着て戦うために。悔しさと“古巣”への思いを成長の糧に、森岡はチームの力となれる選手を目指す。
文=平柳麻衣
By 平柳麻衣