来季Jクラブ加入が内定している流通経済大学のFWジャーメイン良(ベガルタ仙台内定)と早稲田大学のMF秋山陽介(名古屋グランパス内定)は、流通経済大学付属柏高校時代の同級生。高校年代“日本一”の座に輝いた栄光も、厳しい練習に耐えた日々も、今の2人を形作る大切な思い出。懐かしい記憶を辿りながら、終始笑顔のたえない対談が繰り広げられた。
インタビュー・文=平柳麻衣
■流経大柏は何でも復唱したがるんです(ジャーメイン)
――偶然にも、お二人とも同じ6月1日に来季のプロ内定が発表されました。高校時代から仲は良かったですか?
秋山 普通……だよね?
ジャーメイン 高校3年間、ずっと同じチームだったので悪くはなかったです。でも、アッキーは寮生じゃなかったし、2人だけで一緒にいることはほとんどなかったですね。クラスは一緒だったっけ?
秋山 3年間一緒だったでしょ!
ジャーメイン あ、そうだっけ? あまり憶えてないな(笑)。アッキーは陰キャラなんですよ。
秋山 それを言われるのが本当に嫌だった(笑)。
ジャーメイン 本物の陰キャラじゃなくて、周りから「陰キャラ」っていうキャラ付けをされているんです。真面目だったわけじゃないけど、流経大柏は立花歩夢(現流経大)とか個性が強すぎる選手が多くて、アッキーや石田(和希/現流経大)は教室の端っこで静かに本を読んでいるタイプでした。
秋山 ジャメはいつもうるさいグループの中でふざけていましたね。僕もサッカー部全員でワイワイする時は混ぜてもらっていましたけど、ジャメたちは本当に四六時中ワイワイしていたので、さすがにそれについていくのはキツかったです(笑)。
――当時、どんなことでワイワイしていたのですか?
ジャーメイン 思い出はいろいろあるんですけど、メディア向けにしゃべっても大丈夫なエピソードはほとんどないんですよね。学校の名誉に関わるので、かなり危険。
秋山 それはダメだ(笑)。
――では、高校時代のサッカーの話を。お二人が3年生の時に、高円宮杯U-18サッカーリーグ2013チャンピオンシップで高体連として初優勝という快挙を成し遂げました。その強さの秘訣は何だったと思いますか?
ジャーメイン もともと良いメンバーがそろっていたことが理由の一つです。(小泉)慶(現アルビレックス新潟)や青木(亮太/現名古屋グランパス)、アッキーのように中学時代からJクラブの育成組織で有名だった選手がいたので。
秋山 いやいや、僕は無名だったでしょ! Jクラブ出身ってだけで青木や慶と同じ括りにされて、プレッシャーが半端なくてつらかったです(苦笑)。
ジャーメイン あと、僕たちの代は1年生の時からメンバーをあまり替えずに戦っていました。普通、榎本(雅大)ヘッドコーチはずっとトップチームについているんですけど、僕たちの代には1年生の時から付きっきりで指導してくれて、ボールへのプレッシャーや球際の厳しさという流経大柏の本来の持ち味は残しつつ、ボールを動かすという新しい戦い方を極めました。だから、チームとして統一感があったと思います。
――高校時代に「これのおかげで成長できた」と感じるエピソードはありますか?
秋山 フルマラソンを走ったことですかね。
ジャーメイン 2年生の終わり頃に、市民マラソン大会に部員全員で出たんですよ。たぶん、監督の思いつきで。練習では20キロまでしか走ったことがなかったから、いざ本番に臨んだら30キロから先が異次元でした(苦笑)。
秋山 あの時の筋肉痛はマジでヤバかった。20キロまでは正直なめてたよね。「余裕じゃん」って(笑)。
ジャーメイン 終わった後、これは1週間くらいオフをもらえるだろうと思っていたら、その2日後くらいから普通に練習が始まったんですよ。
秋山 あれのおかげで心身がタフになりました。
ジャーメイン あとは流経大柏で有名な『電柱挨拶』とか。何でも復唱したがるんですよね。
秋山 したがる(笑)。
ジャーメイン したがるっていうか、全員整列して、監督か誰かリーダーの人が言った言葉をみんなで復唱するんですけど、最初は「おはようございます」とか挨拶から始まって、だんだん「いただきます」とかふざけ始めるんですよ。
秋山 あれって挨拶の練習ってことだったのかな。
ジャーメイン 3学年下の後輩たちの話によると、本当かどうか分からないけど、「スライディングでこんにちは」っていう言葉を復唱したこともあるらしいです。
一同 (爆笑)
秋山 僕たちの頃より進化しているな(笑)。
ジャーメイン 高校時代は本当にキツイことばかりだったし、精神的にかなり鍛えられたと思います。1年生の頃は上下関係も厳しかったですし。
秋山 だから今、大概のキツイことには耐性があります。それは間違いなく、高校時代の経験のおかげですね。
ジャーメイン あとはやっぱり本田(裕一郎)監督の存在が大きかったですね。人格者なのでいろいろな話をしてくれましたし、きついことばかりだったけど、流経大柏に行って良かったなと思っています。今、もう一度あの3年間を経験しろと言われたら、絶対に無理ですけど(笑)。
――同期ですでにプロ入りしている小泉選手や青木選手との思い出はありますか?
秋山 青木は名古屋の練習に参加した時、ずっとお世話になっていました。
――名古屋加入を決めた理由の中には、「青木選手とまた一緒にプレーしたい」といった思いも含まれていますか?
秋山 そういうことにしておいてください(笑)。でも、練習参加の時、スムーズに入れたのは青木や(田口)泰士さんがいたおかげですね。慶についてはジャメのほうがエピソードを持っているんじゃない?
ジャーメイン 高校3年生の時、インターハイの全国大会決勝で市船(市立船橋高校)に負けたんですよ。勝ったらオフをもらえるはずだったんですけど、負けたことによって九州からそのまま飛行機に乗って金沢へ遠征に行くことになったんです。会場からホテルまで移動するバスの中、負けたショックが大きかったので誰もしゃべっていなくて。でも、パッと隣の席を見たら慶が下を向いてニヤニヤしているんですよ。「ジャメ、よく考えてみ? 俺たち日本で2位だぞ」と言って、いきなり銀メダルにキスし始めたんです。
一同 (爆笑)
ジャーメイン やっぱり当時、「市船だけには負けちゃいけない」っていう意識がすごく強かったんですよ。監督も「市船に負けたら決勝まで来た意味がない」と言ってすごく怒っていましたし、みんなすごく落ち込んでいたんです……慶以外は(笑)。
秋山 これは面白いわ(笑)。
ジャーメイン ある意味、ポジティブなんですかね、あいつは。
■どこのポジションでもボールに触れれば楽しい(秋山)
――お二人は別々の大学に進学しました。リーグ戦などで対戦した際、お互いに対して「成長したな」と感じた部分はありますか?
秋山 ジャメはめちゃくちゃ足が速くなっていてビックリしました。
ジャーメイン 大学1年の時、急に速くなったんですよ。走るトレーニングを本格的に始めたのは3年生になってからなので、たぶん黒人特有の成長期だと思います。
秋山 マジか(笑)。ジャメは1年生の頃からトップチームの試合に出ていて、その頃僕は出ていなかったので、「うわぁ、すごいなぁ」って純粋に思っていましたし、焦りもありました。
ジャーメイン 僕が出始めたのは1年生の夏頃からだけどね。同期の野口翼がいきなり背番号10番で登録されたり、歩夢も開幕スタメンで出たりしていたから、僕も内心は「やばいな」と思っていました。
――お二人とも大学を経てプロ内定が決まりました。高校時代と比べて、自分のどこが一番変わったと思いますか?
秋山 僕は高校の頃よりも考えてプレーするようになりましたし、体つきも変わったと思います。
ジャーメイン 僕はやっぱり足が速くなったのが一番大きいですけど、大学に入って体が強くなったと思います。体重も増えましたし。
――加入先クラブのサポーターに向けて、自分のアピールポイントを教えてください。
ジャーメイン やっぱりスピードは自信を持っているところなので、それを生かせるようなプレーをしたいです。あとはFWなので、結果にこだわってやりたいと思っています。
――仙台のサッカーはご自身のプレースタイルに合っていると感じましたか?
ジャーメイン 実際に練習に参加したり、試合を見た中で、自分のやり方次第で特徴を生かせるなと思いました。
秋山 僕は攻守両面に常に関わり続けるところと、ドリブルの技術や周りとの連動性を見てほしいです。
――秋山選手は自分の良さが一番出せるのはどのポジションだと思っていますか?
秋山 どこのポジションでも強みを出せるのが自分の長所だと思っています。早稲田では今、ボランチをやっていて、過去には選抜でサイドバックをやったこともありますし。どこが向いているのかって言われると、自分でも分からないんですよね……。
――では、自分が一番やりたいポジションは?
秋山 どこのポジションでも、ボールにたくさん触れれば楽しいので大丈夫です!
ジャーメイン 子どもかよ(笑)。高校生の頃のアッキーは完全にドリブラータイプだったので、サイドハーフが一番合っていたと思うんですけど、早稲田に入ってからはパスもうまくなったし、本当にどこでもできる、ユーティリティーな選手になったなと思います。強いて言うなら、やっぱり攻撃的な選手だからシャドーがいいんじゃないかな。
秋山 早稲田に入って、2学年上にサイドハーフですごいドリブラーの選手がいたんです。その選手とポジションを争う上で、同じようなプレーをしていたらなかなか勝てないなと思って、もっといろいろなことができる選手になろうと思いました。(古賀聡)監督もサイドハーフだけでなくFWやボランチといろいろなポジションで使ってくれて、そのおかげでプレースタイルに幅が出たのかなと思います。
――残りわずかとなった大学サッカーで成し遂げたい目標を聞かせてください。
ジャーメイン リーグ戦で優勝することがチームとしての今年の最大目標です。個人タイトルはあまり意識してないですけど、チームが勝つために毎試合、取れるだけ点を取りたいと思っているので、チームを優勝に導いた結果として、得点王になれたらいいなと思います。
秋山 僕はチームとして絶対に1年で1部リーグに昇格することと、2部リーグ優勝を目指して頑張っていきたいです。
――では、プロ入り後の目標は?
秋山 まずはA契約ですね。自分のプレーを多くの人に認めてもらって、少しでも早くチームの中心になりたいです。
ジャーメイン 1年目から試合に絡んで、その中でもやっぱり結果、ゴールにはこだわりたいです。
――流経大柏出身の選手とJの舞台で再会するのが楽しみですね。
ジャーメイン 僕はまた同じチームでやりたかったので、アッキーが羨ましい。慶や青木とユニフォーム交換をしたいですね。
▼生年月日/1995年4月19日 ▼身長・体重/182センチ・75キロ
FC厚木ジュニアユースDREAMS、流通経済大学付属柏高校を経て流通経済大学へ。1年時から出場を重ね、複数クラブから注目を集める中、ベガルタ仙台への来季加入を決めた。7月22日に行われた仙台vsヴィッセル神戸のプレシーズンマッチにJFA・Jリーグ特別指定選手として出場し、自ら獲得したPKを決めてゴールを奪取。17年ユニバーシアード日本代表。
▼生年月日/1995年4月13日 ▼身長・体重/170センチ・64キロ
ジェフユナイテッド千葉U-15、流通経済大学付属柏高校を経て早稲田大学に進学。ユーティリティー性を身につけてチームの主軸へと成長を遂げ、今年6月に名古屋グランパスへの来季加入内定が発表された。JFA・Jリーグ特別指定選手として8月6日のJ2第26節愛媛FC戦でJリーグデビュー。持ち味のドリブル突破からアシストを記録するなど存在感を示した。
By 平柳麻衣