快晴のブルーと、時折吹く春風に散り始めたサクラの花びら舞う愛媛県総合運動公園。2022年の『JA全農杯全国小学生選抜サッカーIN四国』は、大雨となった昨年と打って変わって素晴らしいコンディションのもと、4月2日、3日の2日間にわたって行われた。
直前の1月~3月に新型コロナウィルスの変異株・オミクロン株が蔓延し、選手やスタッフに聞くと、3カ月対外試合ができなかったというチームも多く、昨年同様なんとか開催へこぎつけられた関係者への感謝のことばが絶えない。
この大会には徳島県、香川県、愛媛県、高知県各県大会の上位3チームが一堂に会し、2日にリーグ戦、3日に順位決定戦を行い、優勝チームには『チビリンピック2022JA全農杯全国小学生選抜サッカー決勝大会』への出場権が与えられる。
8人制12分3ピリオドで行われる試合は第1、第2ピリオドは選手完全入れ替え、休憩を挟んで行われる第3ピリオドはどの選手が出てもよいというレギュレーションとなっている。小学生の大会の一つの特徴として、女子選手も多く参加している。運動量が必要だったり、体を張る場面も多いDFで起用される選手もおり、女子選手の活躍にも自然と目が向かう。
林崎・里浦SS(徳島県)の松本琴星(まつもとことせ)は女子というだけでなく、最上級生ではない5年生の選手。左サイドの中盤で味方へ散らすパスや鋭い踏み込みのボール奪取を見せ、1、3ピリオドに出場。主力の一翼を担っていた。
負けた試合を悔しがりながらも「ボールを持って周りを見てマークがついていないところへパスできたのが良かった」と振り返り、目標は高く「全国大会へ出場したい!」。
2日の結果を受けて決勝トーナメントへ進んだのは、FCソレアーダ高知(高知県)、FC今治U-12(愛媛県)、N.S.P丸亀エルフ(香川県)、FCゼブラキッズ(愛媛県)の4チーム。
FCソレアーダ高知とFC今治U-12の試合では、第2ピリオドに行本康(ゆきもとこう)のサイドネットに突き刺す精密な直接フリーキックで先制したFC-今治U-12が得点を重ねて4-1で勝利を挙げ、N.S.P丸亀エルフとFCゼブラキッズとの試合では第2ピリオドに藤松架竜(ふじまつかける)が全得点に絡む1ゴール4アシストでN.S.P丸亀エルフに立ちはだかり、5-2でFCゼブラキッズが勝利。決勝戦は愛媛県勢同士の対戦となった。
立ち上がりからFC今治U-12がゴール前へ攻め込んだら、返す刀でゴールへ肉薄するFCゼブラキッズと息もつかせぬ攻防。2分過ぎにドリブルで持ち込んだFC今治U-12渡部那津(わたべなつ)のミドルシュートで先制すると、直後のキックオフでFCゼブラキッズは明比煌真(あけびこうま)がロングシュートで取り返し、試合の激しさはいきなり最高潮。オフィシャルから「時間がたつのが早すぎる」というつぶやきが聞こえるほどの熱い第1ピリオドは1-1のタイで終わった。
第2ピリオドへ入って、「相手を見ながら相手の守っていないところ、(自由にプレーできる)時間を持っている選手を見つけながら攻める(FC今治U-12・柏木健太郎監督)」というFC今治U-12の攻撃がFCゼブラキッズの守備網の隙へと侵入していく場面が見られるようになってくる。
第2ピリオド6分30秒過ぎ、左サイドを鋭く突破した福田篤人(ふくだあつと)のクロスをピンポイントで川口湊人(かわぐちみなと)があわせてFC今治U-12がリード。時間が経ちプレスが決まりにくくなってFCゼブラキッズ下がり気味になると、今度は岡隅海希空(おかすみかのあ)を中心にどんどん中長距離のシュートを放つ。
11分40秒過ぎ、岡隅の「強いシュートで、コースを狙おうと思って(岡隅)」打ったセンターサークル付近からのロングシュートはキーパーもお手上げの美しいゴール。FC今治U-12が3-1と2点リードを奪う。
それでも、「後ろからの声を出してのコーチングが(大会を通して)良かった(FCゼブラキッズ村井謙一郎監督)」ゴールキーパーの門屋悠真(かどやゆうま)は「切り替えていこう!」と声を張り、チームを鼓舞。心掛けているというポジティブなコーチングで崩れそうな守備網を立て直す。
第3ピリオド、お互いに2日間で4試合目、晴天で気温も高く、疲れもにじみ出る中、それでも相手に打ち克とうと最後まで駆け抜け、締まった展開のまま3-1でタイムアップ。芝の上に広がるサクラ絨毯の上でFC今治U-12のブルーのユニフォームが踊り、喜びの声が響いた。
試合によってGKも担ったキャプテンの潮見由陽(しおみゆうひ)は「1試合目(0-0の引き分け)でヤバいと思ったけど、(大会を通じて)気を抜くことなくパスを回しながらゴールを目指す自分たちのサッカーができたと思います」と胸を張った。
実力の拮抗した大会だった。準決勝で敗れたN.S.P丸亀エルフ、FCソレアーダ高知はともに第2ピリオドの「魔の時間帯」をしのぎ切れていれば、1、3ピリオドでは互角、ないしそれ以上の試合を見せていて決勝のカードが違うこともあり得たし、2日のリーグ戦でFC今治U-12は1勝1分け、得失点差での勝ち上がり。
どのチーム・選手にもチャンスはあり、それを掴むのは成長への意思のより強い子供たちなのだろう、インタビューを通じてそう思わせてくれた。
5月3日~5日にわたって日産スタジアム(神奈川県横浜市)で行われる『チビリンピック2022JA全農杯全国小学生選抜サッカー決勝大会』決勝へ進むFC今治U-12。「どんどんゴールへ仕掛けていって全国でも勝っていきたい(岡隅)」、「努力をして、勝つだけでなく点差を付けて勝てるよう(決勝大会へ向けて)頑張る(潮見)」と自信を掴んだ様子。
FC今治U-12柏木監督は、「今日は優勝できたので100点。なかなかほかのチームと試合ができなかった中で、積み上げてきたものがどれだけできるかを経験して、これからも成長していってほしい」と選手たちが自ら掴んだ結果と成長に目を細めた。
取材・文=上溝真司
全国9地区で開催される『JA全農杯全国小学生選抜サッカー』の模様は@zennoh_sportsにてTwitter速報を実施。
By サッカーキング編集部
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