2年ぶり7回目の優勝を果たしたベガルタ仙台ジュニア
春の日本一を決める大会が幕あけ
3月2日、3日の両日、『JA全農杯2024全国小学生選抜サッカーIN東北』が福島県相馬市の相馬光陽サッカー場にて開催された。
東北6県それぞれの4種委員会から推薦された2チームずつ、計12チームの(大会開催時)3~5年生が参加。5月3~5日に、神奈川県横浜市で開催される『JA全農杯チビリンピック2024 JA全農杯全国小学生選抜サッカー決勝大会』の東北ブロック予選も兼ねており、集まった12チームは優勝と共に上位2チームに与えられる全国大会の出場権を目指して戦った。
試合は8人制で行われるが、小学生年代のサッカーは多くの選手に出場機会を与えることが重要との考えから、今大会はより多くの選手がプレー経験を積める試合方式が採用されている。12分×3ピリオドで行われ、第1ピリオドと第2ピリオドで選手を全員入れ替え、第3ピリオドは自由に交代ができる仕組みだ。
2日の予選リーグでは、3チームずつの4グループに分かれ、総当たりで対戦し、各グループの上位2チームが3日からの決勝トーナメントに進出。決勝に進出した2チームが5月の決勝大会に出場する。グループ3位のチームや、準々決勝で敗れたチームもフレンドリーマッチを実施し、多くの子どもたちに実戦の機会が与えられた。
白熱の予選&決勝Tを勝ち上がったのは…
予選リーグ、決勝トーナメントともに熱戦が繰り広げられ、まず決勝に駒を進めたのは2年ぶりの優勝を狙うベガルタ仙台ジュニア(宮城/以下ベガルタ仙台)。予選リーグはモンテディオ山形ジュニア庄内(山形)に1-0、ヴェルディSS岩手 U-12(岩手)に3-0と勝利し、Cグループ1位。決勝トーナメントでは準々決勝でT2ジェネラルSC(秋田)と1-1で迎えたPK戦(3-2)で勝利。準決勝ではアビラーション(福島)に8-1と大勝し、5大会連続7回目の全国大会出場を決めた。
もう1チームの決勝進出チームは、バンディッツいわきジュニア(福島/以下バンディッツ)。昨年は惜しくも準決勝で敗退したが、予選リーグはブラウブリッツ秋田U-12(秋田)に3-1、なかのFC(宮城)には0-0の引き分けでDグループ2位。決勝トーナメントでは、準々決勝でモンテディオ山形ジュニア村山(山形)に2-1、準決勝ではFC Grows(岩手)に1-1でPK戦までもつれたが、PK戦を4-3で勝利し、初の決勝進出と全国大会出場を決めた。
惜しくも準決勝で敗れ、3位に終わったFC Growsの佐々木豪臣監督は「この代は上を狙えると思ったのですが…」とPK戦で決勝大会出場を逃したことを悔やんだが、「天候に左右されず、どんな時もやれるテクニックを身につけて欲しい」と、この経験をバネにさらに技術を磨いて欲しいと語った。
同じく準決勝で敗れた4位のアビラーションを率いた池田光忠監督は「この大会に出ているチームは良いチームばかりでした。準々決勝で、なかのFCさんと対戦して良い勉強になり、なかのさんの分まで戦って良い勝負ができればと思ったのですが、準決勝では相手(ベガルタ仙台)の技術、判断の速さに勉強させられました。ドリブルで1対1で真っ向勝負するのがうちのチームのコンセプトなので、1対1で戦えるように成長してもらえれば」と、今大会の経験を糧にさらなる成長を願った。
“決勝戦男”が躍動!
迎えた決勝戦は、ベガルタ仙台とバンディッツが激突。第1ピリオドはベガルタ仙台が相手陣内に攻め込む展開となり、7分に浅井桐哉(5年生)が放ったミドルシュートがゴール左上隅に突き刺さってベガルタ仙台が先制した。浅井は一昨年も昨年も今大会の決勝でゴールを決めており、3年連続の決勝でのゴールとなった。直後の8分には、バンディッツのゴールキックがミスとなってゴール前にいた浅井にボールが渡り、これを落ち着いてゴールに押し込み2点目を奪取。ベガルタ仙台が2-0とリードして第1ピリオドを終えた。
第2ピリオドも押し気味に試合を進めたベガルタ仙台は8分、10分と千葉碧優斗(5年生)が放ったロングシュートが立て続けに決まり、11分にも佐々木陽大(4年生)のクロスから千葉麟太郎(4年)がゴールを決めて、第2ピリオドを終えて5-0と大きくリードを広げた。
第3ピリオドの4分には、浅井のクロスから島貫瑛生(3年)がゴールを決めた。一矢報いたいバンディッツは試合終了間際に佐川健(5年)がゴールネットを揺らしたが、惜しくもオフサイドの判定。このまま試合は終了し、6-0で勝利したベガルタ仙台が2年ぶり6回目の優勝を決めた。
いざ全国大会へ
ベガルタ仙台の永井篤志監督は試合後、「準々決勝がずっとリードされる展開で苦しんだのですが、準決勝と決勝はそれを乗り越えて、気持ちが楽になってのびのびプレーできました。この試合で全国が決まるという試合をいっぱい経験できているのが大きかったです」とコメント。全国大会の常連ということもあり、大舞台を多く経験してきたことでチームが成長してきた手応えを口にした。
ベガルタ仙台はキャプテン2人制を採用しており、キャプテンの1人であるGK佐藤健(5年生)は、味方の良いプレーに対して「良かったぞ!」「ナイスプレー!」と大声でポジティブなコーチングを心がけていた。「ベガルタ仙台のセレクションの時、自分に何ができるかを考えたときに、味方を盛り上げることだと思って、喉が枯れるまで声を出しました。それ以来、毎試合声を出し続けています」とチームメイトを励ますことを常に考えていたことを明かした。
また、もう1人のキャプテンMF庄司瑞人(5年生)は「仲間にメッセージのこもったパスを送れるように心がけています」と、決定機につながるパスを正確に出そうと奮闘。佐藤が「5失点以内に抑えたい」と語れば、庄司も「自分が点を決めてベスト8に入りたい」と、2人のキャプテンは全国大会に向けて意気込んでいた。
決勝は完敗に終わったものの、準優勝で初の全国大会出場となるバンディッツの馬目茂樹監督は「初めてなので良い経験になります。行くからには勝ちたいですし、良い経験だけじゃなくて何かを得たいですね」と、全国大会に向けての意気込みを語った。「気持ちの部分でやってやる、勝ちたいという気持ちをどう引き出すかが大事。全国に行ったらもっとレベルが高いと思いますが、何とか勝ちたいです」と、全国の強豪相手に気持ちを見せた戦いを展開し、勝利を目指したいと展望。バンディッツのキャプテン馬目羽琉(5年生)は「みんなで力を合わせて全国大会に行けて良かったです。全国でも点を取ってチームを勝たせたいです」と強い意気込みを語った。
冷たい強風の吹く中での大会だったが、どのチームの選手たちも寒さを吹き飛ばす熱気あふれるプレーを見せてくれた。東北代表のベガルタ仙台とバンディッツ。両チームの決勝大会での活躍と、今大会で奮闘を見せてくれた全ての選手たちの成長を期待したい。
取材・文=小林健志