強豪ひしめく関西大会
「JA全農杯全国小学生選抜サッカーIN関西」が3月2〜3日の2日間、京都市左京区宝ヶ池公園球技場で開催された。
この大会は8人制サッカーの全国的な普及を考えて創設された大会で、今年で22年目を迎えた。参加選手は小学5年生以下、試合時間は12分を1ピリオドとする3ピリオド制(計36分)で実施。選手の出場は第1ピリオドに出た選手は第2ピリオドには出られないという独自ルール(第3ピリオドについては自由)で、最低16人の選手が試合に出ることになり、チーム全体の総合力や監督・コーチ陣のマネジメント力が要求される大会になっている。
関西2府4県の代表各2チーム(計12チーム)が参加し、<3チーム×4グループ>に分かれての総当たり戦を実施。各グループ上位2チーム(計8チーム)による一発勝負のトーナメント戦へと進んでいく。そして、準決勝を勝ち上がって決勝戦を戦う2チームが、5月3日から横浜で行われる全国決勝大会(神奈川・日産スタジアム)に出場することになる。
大会2日目(3月3日)の決勝トーナメントに勝ち上がったのは、グループ1位突破が「DREAM FC(大阪府)」、「ディアブロッサ高田FC U-12(奈良県)」、「A.Z.R<アッズーロ>(滋賀県)」、「センアーノ神戸ジュニア(兵庫県)」の4チーム、2位での勝ち上がりが「西宮サッカースクール(兵庫県)」、「上富田フットボールクラブ(和歌山県)」、「FCジュンレーロ紀三井寺(和歌山県)」、「FC ZERO(大阪府)」という顔ぶれ。
全国の切符を懸けた準決勝は接戦に
午前中の準々決勝は、「DREAM FC 6-0 上富田」、「FC ZERO 2-1 A.Z.R」、「ディアブロッサ高田 1-0西宮SS」、「センアーノ神戸 4-0 ジュンレーロ紀三井寺」という結果に。そして、ある意味、決勝よりも重要と考えられる全国大会行きがかかる準決勝では、スコアレスの末に迎えたPK戦を3-1で制したFC ZEROが、DREAM FCとの大阪対決を制し、ディアブロッサ高田に1-0で競り勝ったセンアーノ神戸が全国大会の出場権を獲得した。
大阪対決となったFC ZEROとDREAM FCの一戦は、大阪府予選決勝(DREAM FCが1-0で勝利)の再現。試合は互いに激しくボールを奪い合い攻め合う展開となったが、ともに相手の堅陣を割れず、ついには0-0で終了した。PK戦では1人が失敗したDREAM FCに対して3人全員がしっかりと決めたFC ZEROが大阪府予選決勝のリベンジを達成。終始緊張感があふれるナイスゲームだった。
一方、ディアブロッサ高田対センアーノ神戸の試合は、奇しくも2019年に同じスタジアムでの関西大会決勝カードであり、両チームが全国決勝大会の決勝でも当たった縁のある対戦となった(2019年はともにセンアーノ神戸が勝って全国優勝を果たしている)。さらに練習試合等でもよく対戦し、切磋琢磨し合っているという関係。こちらの試合も激戦となったが、第2ピリオドに決めた貴重な1点を守り切ってセンアーノが勝利し、全国大会出場を決めた。
グループリーグの再戦は…
決勝のFC ZERO対センアーノ神戸は、前日のグループリーグでも対戦し、センアーノが1-0で勝利した試合の再戦に。すでに全国行きを決めたとはいっても、やはり「勝ちたい」、「優勝したい」という思いで選手はピッチで躍動した。
GKからパスをつなぎ守備を崩そうとするFC ZEROに対し、センアーノはロングボールを有効的に使って早い攻撃を仕掛けていく。第1ピリオドは一進一退の展開からチャンスは終盤に訪れる。しかし、FC ZEROは寺田幸志郎が、センアーノは森勇人がともに惜しいシュートを放つが得点には至らない。
そして第2ピリオド、センアーノの攻撃が激しさを増し、3分、7分、9分とチャンスを迎えるが、いずれも決めきれない。そしてスコアが動いたのは第2ピリオド終了間際の12分だった。センアーノの攻撃をはね返したボールがFC ZEROの“レフティ”幾野舜に渡りフリーで抜け出すと、前へ出たGKをかわして左足でロングシュート。これが誰もいないゴールにゆっくりと転がり吸い込まれた。FC ZEROはこのピリオド唯一にして最大のビッグチャンスを見事に活かし、先制に成功した。
勝負の第3ピリオド。苦しい時間帯にも関わらず、互いにゴールを目指して選手の運動量が落ちる様子はない。同点を目指すセンアーノは激しく攻め立て、4分に平松大志のシュート、ピッチを入れ替えた9分には吉本拓馬のボレーがFC ZEROのゴールを襲うが、GK山本睦がファインセーブを連発する。
対するFC ZEROも追加点を狙って寺田、幾野がシュートを放つが、センアーノのGK松本英大が体を張って阻止。センアーノは10分に絶好機を迎えたが、FC ZEROのDFがゴールエリア内で相手のシュートを見事にクリアし、チームを救った。そしてタイムアップの笛が響く。大喜びのFC ZEROの選手たちは笑顔が溢れ、センアーノの選手は膝から崩れ落ち涙が溢れる。FC ZEROがJA全農杯IN関西のチャンピオンとなった瞬間だ。
大会プログラムの表紙裏には「全ての子どもたちにプレーをする機会を与え、子どもたちが自由に判断して挑戦できるように」、「子どもたちがサッカーをもっと好きになり、楽しむこと」を最大目標とするのがこの大会であり、選手全員入れ替えの独自ルールはそのためにある。関西代表2チームが来るゴールデンウィークの5月、日産スタジアムでのプレーを思う存分楽しんで、様々な経験を積んで成長できることに期待したい。
▼試合後コメント
■中島優監督 (FC ZERO)
できて3年目のチームで、今の5年生が一期生。一つひとつ勝利を積み重ねれればいいと思っていた。相手のセンアーノさんは歴史のある強いチームで、その胸を借りるつもりでやったのが良かったのかも。決勝点の幾野は常に前を狙っているので、それが功を奏したんじゃないですかね。全国でも一つひとつ積み上げていければいいし、ピッチ内外で恥ずかしくないようにしたい。
(写真撮影で77番・南條斗希のユニフォームを子どもたちが掲げていたのは)チーム創設からのメンバーですが、4日前くらいから体調不良で参加できなくなったので、彼の思いも背負って戦いました。
■藤田圭周キャプテン(FC ZERO)
PK戦とか難しい試合はあったけど、グループリーグで負けたセンアーノにリベンジして勝てたのがすごくうれしかった。全国ではZEROの後ろからビルドアップするサッカーで勝ちたい。
■幾野舜選手 (FC ZERO)
(決勝点は?)GKが飛び出してきたので打ったら入るかなと思って蹴った。全国ではゴール前で何人か抜いてから良いコースに良いシュートを決めたい。
■大木宏之監督(センアーノ神戸ジュニア)
相手GKが上手でした。僕らは最後に攻め切って決定機が何度もあったのに点がとれなかったのでしょうがない。子どもたちをほめてあげたい。
これまでやってきたことを出す。ボールをしっかりつなぎながら前進しようというのはできたと思う。全国優勝はしたいが、育成年代なので全国の良い選手との勝負にこだわって戦って、いろんなことを学んでくれたらと思う。
■安田蒼キャプテン(センアーノ神戸ジュニア)
全国大会ではチビリンのメンバーに入れなかった選手の分もしっかり全力で戦って優勝を目指して頑張りたい。強度の高いチームとやっても自分たちのつなぐサッカーができるかどうか試したい。
取材・文=貞永晃二