総合力求められる独自のレギュレーション
小学生を対象にした8人制サッカーの大会『2024JA全農杯全国小学生選抜サッカーIN関東』が3月16日と同17日、栃木県の佐野市運動公園で行われた。
試合は8人制で、12分×3ピリオドの36分間で実施。第1ピリオド、第2ピリオドは異なる8人がそれぞれプレーしなければならず、5分間のインターバルを経て行われる第3ピリオドはメンバー構成、交代を自由に行えるレギュレーションだ。登録メンバー全員に一定以上のプレー時間が与えられるため、チームの総合力が求められる。レジスタFCの中城勉監督も「この経験が、今後の彼らの伸び代につながる」と、選手を固定できない大会独自のルールを歓迎する。
全国大会に向けた予選も兼ねている関東大会には、群馬県、栃木県、茨城県、千葉県、神奈川県、山梨県、東京都、埼玉県から各2チームの合計16チームが参加。16日は4チームずつ4組に分かれての予選リーグが行われ、17日には各グループの上位2チームと下位2チームによる順位決定トーナメントが実施された。
前回大会王者が再び決勝大会へ
季節外れの暑さの中で行われた16日の予選リーグを経て、レジスタFC(埼玉県)、横河武蔵野フットボールクラブU-12(東京都)、川崎フロンターレU-12(神奈川県)、東松山ペレーニアフットボールクラブジュニア(埼玉県)、鹿島アントラーズつくばジュニア(茨城県)、横浜F・マリノスプライマリー(神奈川県)、ヴェルフェ矢板U-12(栃木県)、柏レイソルU-12(千葉県)の8チームが決勝トーナメントへと勝ち進み、レジスタ、川崎F、鹿島つくば、横浜FMプライマリーの4チームがベスト4に。
全国大会の出場権を争う3位決定戦では、昨季の大会王者でもあるレジスタFCと横浜FMプライマリーが対戦。試合は、レジスタFCが素早い攻守の切り替えから主導権を握って攻勢に出る展開に。サイドからの攻撃で再三ゴールに迫ると、第2ピリオド終盤の10分、裏に抜け出した藤原義徳が相手GKをかわしてシュートを流し込み、試合の均衡を破った。
その後も主導権を握り続けたレジスタFCが1-0でリードしたまま試合は終了。2年連続6度目となる全国大会出場を決め、連覇にも期待がかかるレジスタFCだが、中城勉監督は「今の6年生が日本一になっていますが、そこに追いつけ追い越せという言葉ではなく、まずは1試合1試合、一人ひとりがレジスタFCらしく戦って、関東代表として一生懸命精一杯戦い抜きたいと思います」と足元を見つめた。
Jリーグ下部組織対決の決勝に
すでに全国への切符を手にした川崎フロンターレU-12と鹿島アントラーズつくばジュニアのJリーグ下部組織対決となった決勝戦は、準決勝でレジスタFCを3-0で下した川崎Fが押し気味に試合を進めていく。すると第1ピリオドの9分、左サイドの角度のない位置から10番を背負う岩田陸叶がゴールネットを揺らし、川崎Fが先制。その直後にも安永唯人のセンタリングに岩田が合わせる形を作ったが、シュートはバーに阻まれた。
対する鹿島つくばは第2ピリオドの3分、ハーフェイラインを少し超えたあたりでFKを獲得すると、吉村孔佑が右足を一閃。鹿島つくばの那須川将大監督も「練習前後の遊びなどでやっていることを出してくれた」と感嘆した“小学生ばなれ”した強烈な弾丸シュートを突き刺し、試合を振り出しに戻した。
その後は、最終ラインからドリブルでマークを剥がしながらボールを運んでいく川崎Fが主導権を握るも、両者譲らず1-1のまま第3ピリオドが終了。6分間の延長戦に突入すると、試合終了1分前に左サイドからボールを持ち込んだ上口大遥が右足でシュート流し込み、勝負あり。PK戦目前で勝利をもぎ取った川崎フロンターレU-12が2011年大会以来の関東制覇を果たした。
この結果、川崎フロンターレU-12と共に、準優勝の鹿島アントラーズつくばジュニア、3位のレジスタFCがゴールデンウィークに神奈川県の横浜スタジアムで行われる『チビリンピック2024 JA全農杯 全国小学生選抜サッカー決勝大会』に出場することが決定した。
試合後コメント
▼川崎フロンターレU−12
■大田和直哉監督
(関東大会を終えて)終わってみれば大量得点できた試合もあったんですけど、一つひとつ難しい試合で、自分たちも初日に関しては納得した試合がなかった中で勝ちきれたのは子どもたちの成長だなと思いました。ただ勝った負けたではなく、自分たちのサッカーができているか、というのをしっかりと評価しながらやれていた。僕自身にとっても子どもたちの新たな発見というか勉強になりました。
(全国へ向けて)この大会のレギュレーションが(最低でも)16人を出さないといけないので、全体をレベルアップさせるという育成にとって大事な部分を(全国に向けても)強化できる。1人とか8人とかでなく、しっかり16人、より多くの選手を育てて全国舞台に臨みたいと思います。
▼鹿島アントラーズつくばジュニア
■那須川将大監督
(試合を終えて)選手は本当によくやってくれたと思うし、奪わられた奪い返すという当たり前のことをしっかりやろうと伝えていたので、気持ちは出ていたし、こういう経験ができたことが大きかった。
(次の舞台に向けて)勝ったり負けたりはあるので、結果だけにとらわれないで何ができたかということを選手たちには伝えています。勝ったから全てがOKではないし、負けたからといって全てがダメなわけでもない。負けた中にもいいプレーがあったり、勝った中にももっともっとできたプレーがあったりする。そういうものをもう一回しっかり自分たちで考えるのもそうですし、考えさせてしっかり成長に繋げていきたいなと思っています。
▼レジスタFC
■中城勉監督
(試合を終えて)関東地区、埼玉県も強豪ぞろいで勝ち抜くのは大変なんですけど、関東の3枠のひとつを何とかもぎ取ることができました。本当に選手たちがよく頑張ったと思います。
去年、日本一になって、そのメンバーからガラッと変わって今年は本当に突出して抜けている選手がいない分、一人ひとりが主役になるようなチームになっています。誰かに頼るチームではないので、このチームを作ってきた時から自分が主役になりたければ、まずは自分で頑張る。そこの部分は選手たちに言ってきたので、誰が決めてもおかしくないような状況だったんですけど結果的に一番前の藤原がよく点を取ってくれました。全員で粘り強く耐えて、獲得できた得点だったと思います。
(GWの決勝大会では)まず1試合1試合、レジスタFCらしく一人ひとりが戦って、関東代表として一生懸命精一杯戦い抜きたいなと思います。
取材・文=平野由倫
By サッカーキング編集部
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