九州は独自のレギュレーション
3月23日、24日の2日間にわたり、『2024JA全農杯全国小学生選抜サッカーIN九州』が宮崎県新富町の新富町フットボールセンターで行われた。
福岡県、大分県、長崎県、佐賀県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県から各2チームずつ、合計16チームが参加し、トーナメント形式で行われる今大会。他の地区大会は12分間×3ピリオド制というレギュレーションで行われるが、この九州大会は20分ハーフの計40分。選手交代は自由に行えるため、登録メンバーをうまく活用しながら戦い抜く必要がある。
23日には1回戦と準々決勝を行い、とみしろ南JFC(沖縄県)、別府FCミネルバU-12(大分県)、大分トリニータU-12(大分県)、サガン鳥栖U-12(佐賀県)の4チームが24日の準決勝へと勝ち進んだ。
そして24日10時から行われた準決勝を経て決勝に駒を進めたのは、初優勝を目指す別府FCミネルバU-12と、2021年度大会以来3年ぶりの優勝を狙うサガン鳥栖U-12。別府FCミネルバは1回戦でSon’s甲佐(熊本県)に1-0、準々決勝はアビスパ福岡U-12(福岡県)に0-0からのPK戦3-2で勝ち上がり、準決勝ではとみしろ南JFCを3-1で下した。対するサガン鳥栖は初戦でKirara Glanz FC(長崎)に7-0で快勝すると、準々決勝では福岡西フットボールアカデミー(福岡県)に3-0、準決勝では大分トリニータU-12とのJリーグクラブアカデミー対決を3-1で制し勝ち進んできた。
雨中の熱戦は終盤に決着
24日は朝から雨が降り続くあいにくの空模様。13時の決勝キックオフを迎えるころには雨足が一段と強くなり、厳しいコンディション下での決戦となった。
立ち上がりからボールを握り、最後尾からの組み立てを図るサガン鳥栖に対し、別府FCミネルバは自陣を固め、相手の攻撃を受け止める戦い方をしていく。両者は他の大会でも決勝で対戦したことがあり、別府FCミネルバの指揮を執っていた小野修太郎コーチは「本来は2タッチ以内で簡単に運び、ペナルティーエリアでは自由に仕掛けさせるスタイルなんですが、サガン鳥栖にそれをやると絶対にやられてしまうと思った」ことから、守備的な戦い方を選択したという。
別府FCミネルバの陣内でプレーが展開される時間が続く。サガン鳥栖は何度もCKを獲得し、セットプレーの流れの中からエースストライカーの児玉啓明や10番を背負う古賀潤が果敢にゴールを狙っていくが、別府FCミネルバはGK藤田頼人を中心に懸命な守りを見せ、得点を許さない。両者スコアレスのまま前半が終了する。
後半を迎えても雨は降り続き、ピッチのところどころに水が溜まってパスやドリブルのボールが止まってしまうシーンが見られるようになった。その状況でもサガン鳥栖はボールを繋ぐスタイルを崩さなかった。「後半は、空いているサイドの手前でボールを握って相手を外に誘い出し、その裏のスペースを取っていくようにした」(サガン鳥栖U-12・荒木亮次監督)ことで徐々にサイドからの攻撃が機能し始める。そして28分には右サイドの崩しから児玉が惜しいヘディングシュートを放つなど、ゴールに迫った。
そして35分、ついにサガン鳥栖が先制する。左サイドからのクロスは相手にクリアされたが、そこから二次攻撃を仕掛けて児玉にボールが渡る。別府FCミネルバの選手たちは複数名で囲い込んで防御を試みたが、児玉は「ボールを受けてからターンでかわして、絶対にカバーが来ると分かっていたので、それもターンでかわした」という冷静な動きでマークを振り切り、右足を一閃。ゴール正面に強烈なシュートを突き刺した。
先制された別府FCミネルバは「元々のスタイルであるフルプレスに切り替え」(小野コーチ)、必死の反撃を試みたが、サガン鳥栖の選手たちも最後まで集中を切らさず、そのままタイムアップ。サガン鳥栖が3年ぶり5回目の九州大会制覇を達成した。
優勝したサガン鳥栖、準優勝の別府FCミネルバは、5月に神奈川県で開催される「JA全農チビリンピック2024 JA全農杯全国小学生選抜サッカー決勝大会」に九州代表として出場する。全国決勝大会は12分間×3ピリオド制で、16人以上の選手を起用しなければいけないレギュレーションだが、サガン鳥栖の荒木監督は「今大会にレギュラーで出ていた選手にもやるべきことがたくさんあるし、そこに食い込んでくるような選手たちとしっかり競争できるような環境を整えていきたい」と、ここからの上積みを宣言。一方、別府FCミネルバの小野コーチは「この代は幼稚園生の頃から大切に育ててきて、実力が拮抗している16人をそろえることができます。層の厚さがあるので、戦えなくはないはず」と全国決勝大会に向けて自信をのぞかせた。
▼試合後コメント
■荒木亮次監督(サガン鳥栖U-12)
別府FCミネルバさんがしっかりと後ろを固めて守備から入るような戦術を採っていたので、自分たちがどう効果的にボールを運び、崩していくかがメインのポイントでしたが、簡単にボールを打ち込んで相手にボールを渡してしまうシーンも多かったです。ハーフタイムに整理をして、空いているサイドの手前でボールを握って相手を外に誘い出し、その裏のスペースを取っていくようにした結果、得点に繋がりました。全国決勝大会に向けては総合的な底上げが必要で、今大会にレギュラーで出ていた選手にもやるべきことがたくさんありますし、そこに食い込んでくるような選手たちとしっかり競争できるような環境を整えていきたいと思っています。
■児玉啓明(サガン鳥栖U-12)
決勝は、自分がゴールを決めて勝利に導きたいと考えながら臨みました。チャンスでなかなか決められずにめっちゃ焦っていましたが、ゴールを決めることができてめっちゃうれしかったです。得点シーンは、ボールを受けてからターンでかわして、カバーの選手もターンでかわしました。絶対にカバーが来ると分かっていたので、うまくかわせればいい形になるな、という感じでした。全試合で1得点以上できたので良かったです。全国決勝大会では、個人としては6得点、チームとしては優勝したいです。スピードに乗って裏を取ってそのまま突破するプレーと、ボールをもらって、この体格を生かしてターンしていくプレーが得意なので、それを見せたいです。
■小野修太郎コーチ(別府FCミネルバU-12)
他の大会でもいい結果を残してきたので、この大会でもチャンスはあるんじゃないかと思っていました。予想よりも周りが強くて苦戦しましたが、子どもたちが苦しい練習に耐えてきてくれたのでここまで進めたと思っています。本来は2タッチ以内で簡単に運び、ペナルティーエリアでは自由に仕掛けさせるスタイルなんですが、サガン鳥栖にそれをやると絶対にやられてしまうと思ったので、ハーフラインまで引かせました。この代は幼稚園生の頃から大切に育ててきて、実力が拮抗している16人をそろえることができます。どの選手も実力があまり変わらないという層の厚さがあるので、全国決勝大会でも戦えなくはないかな、というのが本音です。
取材・文=池田敏明