欧州各国リーグやチャンピオンズリーグといった最高峰の舞台でプレーする日本人選手の姿が日常のものとなった2024年。師走に入った12月7日と8日の2日間、国内外のジュニア年代が集う『ヤンマーカップ U-12 2024』がJ-GREEN堺にて開催された。
ヤンマーといえば「小さなものから大きなものまで動かす力だ ヤンマーディーゼル」という歌詞が、30代以上の人たちにはお馴染みだろう。ヤンマーのエンジンは、発電機、トラクター、船、建設機械など色々なものを動かす原動力であり、社会を動かす原動力だ。同社では「小さなものから大きなものまで」を動かしてきた過去に加えて現在、若者の心を動かし、サッカーを通じて未来を創っていくことにも力を注いでいる。
そして、「人を、未来を、咲かせよう」という次世代育成活動の一環として「サッカーで未来を動かそう」という思いのもと開催しているのが、『ヤンマーカップ U-12』だ。同大会は2012年から開催され、今回で通算13大会目。ヤンマーホールディングス株式会社による特別協賛の下、8人制・全試合15分ハーフというルールで行われている。
参加チーム数は32チーム。海外からは韓国(4チーム)とタイ(2チーム)、国内は年末開催の全日(JFA全日本U-12選手権)の出場権を得たFC ZERO(大阪府代表)とボルト東山(京都府代表)に加えて、セレッソ大阪U-12など、関西を中心に鳥取、岡山、愛知、福井、富山の各県から子どもたちが集まり、4チーム×8グループによる予選リーグの後、順位決定トーナメントで優勝を争った。
決勝戦のカードは、TEAM KOREA(以下、KOREA)vs.セレッソ大阪U-12(以下、C大阪U12)という日韓対決となった。KOREAは全員が6年生で韓国の9チームからセレクトされた選抜チーム。対するC大阪U12は6年生主体ながら5年生も含まれたチームだった。
両チームとも予選リーグを3戦全勝で突破。各グループ首位8チームによる1位トーナメントに進むと、KOREAはYANGSAN UNITED(韓国)を4-0、FORZA AICHI(愛知)を4-1と圧倒して決勝へ。C大阪U12もマルヤスFC83(愛知)を2-0、センアーノ神戸(兵庫)を4-1で破って決勝戦に駒を進めた。
JーGREEN堺のメインスタジアムで行われた決勝は、序盤からKOREAがボールを握り攻勢に出るが、C大阪U12は持ち前の粘り強い守備ではね返していく。両チームともに素早いトランジションからのカウンターで好機を作り出すが、スコアは動かない。前半はスコアレスで終了するかと思われたが、KOREAが15分に20番のハ・ソンユンのゴールで先制する。ペナルティエリア内で相手DFに体を寄せてボールを奪うと、そのままゴールネットを揺らした。
リードを奪ったKOREAは、その勢いのまま後半も力強く攻め込んでいく。そして後半4分、左サイドを突破した9番イ・シウォンの左足シュートがこぼれたところを、またしてもハ・ソンユンが抜け目なく押し込んだ。2-0と点差を広げたKOREAは守りに入る様子もなく、焦りの見え始めたC大阪U12に圧力を加え続ける。
後半7分、右サイド深く侵入したイ・シウォンのマイナスクロスを正確に蹴りこんだのは、またしてもハ・ソンユン。このゴールで試合の趨勢は決まったが、意地を見せたいC大阪U12も反撃。アディショナルタイムにPKを得ると、そのPKはGKに止められたが、こぼれを19番・小西雷蔵が押し込んで一矢を報いた。試合はそのままタイムアップとなり、3-1で勝利したKOREAが優勝した。
大会MVPは、決勝戦でハットトリックを達成したKOREAのハ・ソンユン。憧れの選手にストークシティ(英チャンピオンシップ)で10番を背負う21歳の韓国代表MFペ・ジュノの名前を挙げる同選手は、「監督が使ってくれたことが嬉しかった。海外に行って認められる選手になりたい」とコメント。恵まれた体躯に加え、技術とスピードも兼ね備えた逸材が将来、韓国代表でペ・ジュノと“共演”する日が訪れるかもしれない。
今大会も大会本部の横には、サッカー専用トレーニング機器「ICON」を設置。選手たちが楽しんでプレーする姿が印象的だった。世界各国のクラブチームでも使用している「ICON」は、周囲を円形で囲むパネルの中に人が入り、点灯したランプのパネルにボールを当てるというもの。「パスの精度」や「判断力」を高めることができ、点灯した色に応じてポイントが加算され、ミスをすると減点される。ポイントを増やすためには、常に首を振って視野を確保する必要があり、止めて蹴る技術も重要。子どもたちは試合の合間に獲得点数を競い合って楽しんでいた。
大会参加は10回以上というTEAM KOREAの通訳によると、「韓国ではヤンマーカップU-12に参加したいというチームが多い。今回6チームが参加を希望したが、最大4チームまでだったので選抜チームを作って参加することになった」という。韓国でも『ヤンマーカップ U-12』を通した日本サッカーとの交流が評価されている証左であり、同時にしっかりとした大会運営への信頼の表れとも言えそうだ。
2日間に渡ってJ-GREEN堺のピッチでボールを追いかけた選手の中から、未来のJリーガー・Kリーガーだけでなく、ヨーロッパで飛躍する選手が現れるかもしれない。2025年大会でも、新たな原石たちが躍動する姿が楽しみだ。
取材・文=貞永晃二
写真=齊藤友也、柳瀨心祐
By サッカーキング編集部
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