文・写真=安藤隆人
西武台にとって、この一戦はリベンジの一戦だった。3月に岐阜県で行われた大垣市長杯で西武台は、中京大中京に0-5の大敗を喫した。
「圧倒されてしまった。同じ事を繰り返さない事を誓った。そこでチームはまとまったと思う」
西武台・守屋保監督が語ったように、この一戦から西武台はチームとしてのまとまりが一段と増した。もともと橋本陸、川田航平、新行内一輝の3トップの破壊力がウリの今年のチームの期待値は非常に高かった。その自信を打ち砕く敗戦は、チームにとってプラスに働いた。
攻撃陣が持ち前の破壊力を発揮し、県リーグではリーグナンバーワンの得点数をマークし、首位をキープ。そして臨んだこの一戦。立ち上がりは中京大中京にペースを握られた。12分にはMF辻星哉に鮮やかなFKを決められ、先制を許した。しかし、20分を過ぎると、「運動量では負けない自信があった。動き続ければチャンスができると思っていた」と川田が語ったように、彼が何度もDFラインの裏を狙い続けた事で、次第に中京大中京のDFラインが下がり出し、橋本と新行内の両FWがよりバイタルエリアでプレーできるようになった。
3トップにボールが行き渡れば、西武台の武器が効力を発揮する。その通り、後半に入ると、試合のペースは西武台へ。52分に左サイドで橋本がボールを受けると、追い越して走ってきたボランチの佐藤健太へ縦パス。相手のセンターバックが食いついた瞬間、中央の川田がフリーになると、そこに佐藤からセンタリングが届く。これを「得意の形」と川田がハーフボレーであわせ、ゴール右上に鮮やかに決めてみせた。これで勢いに乗った西武台は、57分に左CKを得ると佐藤のキックを再び川田がヘッドで押し込み、一気に逆転に成功する。さらに68分には、こぼれ球を拾った川田のパスを受けた新行内が3点目のゴールを挙げ、リードを2点に広げた。
69分に中京大中京のFW梅原遼太に1点を返され、1点差に迫られるも、そのまま3−2の勝利。
0-5の悪夢からリベンジは果たした。しかし、西武台の選手達はこれで何かを成し遂げたとは思ってはいなかった。引き上げてくる選手達の表情に、笑顔が少なかった。
「内容が…、良かったのは勝てた事だけで、誰も納得はしていないと思う。次こそは良い内容で勝ちたい」(川田)
まだまだ自分たちはこんなものではない、もっとやれるはず。2回戦の相手は佐賀学園に大量7点を挙げ勝ち上がってきた米子北。攻撃力ある相手を凌駕する攻撃を展開する事を、彼らの表情が決意として表していた。