文・写真=安藤隆人
中島賢星(横浜F・マリノス)、増山朝陽(ヴィッセル神戸)を擁し、強烈なサイド攻撃を武器に、真夏の山梨を席巻してから1年。「赤い彗星」がまた新たなスタイルを携えて、真夏の兵庫で躍動を続けている。
システムはこれまで同様に伝統の4-3-3だが、距離間を持って、サイドの個人技を活かしながらの攻撃だった昨年に対し、今年は1トップの毎熊晟矢、中村健人と藤川虎太朗のツーシャドーが、近い距離間を保ち、彼らがテンポの良いパス回しで、起点とリズムを作る。ここに左ワイドの1年生・福田湧矢、右ワイドの三宅海斗が張るのでなく、中に絞ってポゼッションに加わり、高い位置でボールを支配しながら、小田逸稀と福重達也の両サイドバックのオーバーラップなどを駆使して、スペースを巧みに突いて行くサッカーを展開する。
日大藤沢との一戦でもこのスタイルが効力を発揮した。0-0で迎えた24分、中央でボールを受けた毎熊が、追い越してきた右サイドバックの小田にパス。小田はDFラインの裏に抜け出そうとする藤川の動きを見逃さず、グラウンダーのパスを通す。オフサイドラインを搔い潜った藤川が、GKの前で冷静にワンタッチでコースを変えて、ゴールに流し込んだ。
このゴールの流れは昨年にはなかったパターンだ。このゴールで勢いに乗った東福岡は、43分には左CKを得ると、中村のキックをゴール前で待ち構えた三宅が、ドンピシャの弾丸ボレーを叩き込んだ。
その後、日大藤沢も菅原大雅、住吉ジェラニレショーンといったパワーのあるアタッカーを投入してきた事で、徐々に劣勢に立たされると、56分には蛭田悠弥の左からのクロスを、住吉に身体で押し込まれ、1点差に迫られた。だが、U-17日本代表GK脇野敦至を軸に、守備陣が踏ん張りきって、2-1の勝利。
2点取った後の戦い方に課題は残したが、勝ちきってみせたのは強豪の力たる所以であり、かつその2点を奪う過程は、チームの成長と明確な方向性を示したものだった。
「『ウチのサッカー』というベースがある中で、選手個々の良さを活かして行く。今年のチームはよりゴールに近い場所でのプレーの質の高さを要求している」。
森重潤也監督が語ったように、中盤からアタッキングエリアでの質の高さを追求し、具現化できている今年の東福岡。今後、さらにそれを表現できれば、自ずと2連覇は視野に入ってくるだろう。