文・写真=安藤隆人
待ちに待ったエースストライカーの一撃が生まれた。1-0で迎えた28分、DFラインの右にできたスペースを見つけたFW永藤歩は、センターバックの意識を一瞬引きつけた後、一気にそのスペースに走り込んだ。そこにDF白井達也からロングボールが届く。ブロックを敷いていた滝川第二の守備陣にできたエアポケットでボールを受けると、慌てて間合いを詰めてきたDFを切れ味鋭い切り返しから、一瞬の内にスピードで置き去りに。角度があまり無い位置だったが、GKの体勢を良く見て、右足シュートを逆サイドネットに突き刺した。
「今日決めないと、本当にチームに迷惑をかける事になってしまう。だから、どうしても今日は決めたかった」
3回戦までチームは10得点を挙げているが、彼だけゴールが無かった。4試合目にして、生まれたナンバー10のゴール。2-0で勝利して準決勝進出を果たしたチームにおいても、待望の瞬間であった。
彼の持ち味は屈強なフィジカルと爆発的なスピード。駆け引きがうまく、一瞬のスピードで相手を置き去りにする。フィジカルコンタクトも強く、ポストプレーからドリブルで打開する力を持っている。ノーゴールだったが、3回戦までも全く活躍していない訳ではなかった。彼が前線で積極的なランニングで相手守備陣を混乱させ、かつ高い位置で起点を作ったからこそ、MF高宇洋、矢村健、工藤友暉、原輝綺と椎橋慧也のダブルボランチも、積極的に前を向いて仕掛けられ、ゴールをマークする事ができた。これは彼の献身的なプレーに対し、周りの選手たちがしっかりと呼応し、連動性を高めているが故のことであった。だからこそ、彼がゴールを挙げた事は、チームにより大きな勢いをもたらすだろう。
「相手の守備のやり方、形を見て、自分の持ち味の出し方を変える事を意識しています。引いているのであれば、今日のゴールのように空いたスペースで受けるイメージ。後半のように前に出てきたら、積極的に裏を狙って行く。この質をもっと上げたいし、もっとゴールを奪いたい」
準決勝以降も献身的なプレーを継続し、かつゴールという結果を残す。準々決勝で確かな手応えを掴んだエースストライカーは、2戦連発を誓い、関東第一戦に挑む。