文・写真=安藤隆人
立正大淞南のサッカーを一言で言えば、「湧き出るアタッキングサッカー」と表現したい。ボールを持ったら迷わず仕掛ける。一歩でもボールをゴールに近づける。彼らのサッカーは、常にゴールに一直線に向かっている。
毎年のように個で打開できる選手をそろえ、ゴールへ向かう共通理解の下、まるで選手が沸いて出てくるようなアタッキングサッカーを展開する。今年のチームもそのカラーが色濃く出た好チームだった。今大会は接戦が多く、4試合中3試合がPK戦とギリギリの展開だったが、きっちりと勝ちきって、インターハイでは3度目となる準決勝まで駒を進めてきた。
迎えた準決勝・東福岡戦。先制攻撃を仕掛けたのは、彼らだった。5分にDFラインの裏へのボールを、GK脇野敦至が弾いたこぼれを拾ったMF上西健也がシュート。これもGK脇野のセーブに合うが、こぼれ球に今度は井上直輝が反応し、シュートを突き刺した。
幸先のいいスタートをきったが、東福岡の冷静な戦いぶりに、次第にピンチを招くようになる。10分に左サイドを破られ、MF藤川虎太朗に同点弾を浴びると、15分にはMF橋本和征に決められ、逆転を許してしまった。だが、攻める姿勢を崩すことなく、前への推進力を失わない立正大淞南は、井上と上西のツートップ、上村大悟、杉本龍哉の両サイド、トップ下の白岩直斗を軸としたアタッカー陣が、ドリブルと相手の裏を突くパスを駆使し、東福岡ゴールに襲いかかった。20分にはスルーパスに反応した上村が抜け出すも、GK脇野の絶妙な飛び出しに阻まれ、22分にもスルーパスから今度は杉本が反応し、強烈なシュートを放つが、これもGK脇野に阻まれた。
ペナルティーエリアの中まで侵入するも、今大会屈指のGK脇野の壁にはじかれてしまう。そうこうしているうちに、33分に藤川に3点目を奪われると、後半立ちあがりの37分には、藤川にハットトリックとなる4点目を決められてしまった。
反撃の機運をことごとくそがれてしまうが、それでも前に仕掛ける姿勢を崩さなかった。だからこそ、1-4になってもチャンスを作ることができたし、49分には上村が右サイドを突破し、センタリングから途中出場のMF千川原慎がヘッドで合わせ、2点目を奪えた。結果は2-5の大敗だったが、最後まで攻め抜く姿勢を彼らは見せてくれた。
「ウチは個だけでやっていて、グループでやれていなかった。攻めても、1-3になってしまうのが東福岡の強さ。力で押しきれるのが実力のあるチーム。力で押しきられるのが、実力のないチーム。その差が出たと思います」
試合後、南健司監督が厳しい指摘をしたように、前への推進力はあったが、DFラインのビルドアップや、中盤のケアなどの部分で相手に上回られてしまったからこそ、差がついてしまった。だが、彼らの攻撃がはまったときは、見ている者をワクワクさせてくれるサッカーを展開してくれるのは間違いない。この試合でもその要素を見せることができた。
「3回止められても、6回突破する。一回体を入れられても、入れ返す。この気持ちは持ち続けている。今日は相手にボールがないところでの差が出てしまった。ここまでの勝ちあがりも、(GK小笠)姫馬の力があったからで、僕らの力ではありません。もっと自分たちのレベルを上げて、もっと強くならないといけないことを痛感した」
上村が語ったように、選手たちは誰一人として、この結果に満足していない。この敗戦、この大会が彼らの心に火をつけ、冬にはより精度と破壊力が増した「湧き出るアタッキングサッカー」が見られることを期待したい。