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「えげつない」センスとパワーを宿らせた東京VユースのMF渡辺皓太

2015.08.12

文・写真=安藤隆人

 体はそこまで大きくない。顔もどこか幼さが残る。しかし、その内側には「えげつない」と表現したくなるようなセンスとパワーを宿らせている。東京ヴェルディユースのMF渡辺皓太は、卓越した技術と一瞬のスピードを持ち、勝負度胸満点の選手だ。

 試合中の彼を見ていると、本当に飄々とした表情でピッチ上に立っているが、オンボールになった時、パワーを一気に解放するかのように、すさまじいアプローチと正確かつ強度の高いプレーを見せる。彼の高い予測力とポジショニングの良さがベースとなって生まれているからこそ、そのプレーの精度は非常に高い。

 常に周りを見渡して、危険な場所、チャンスとなる場所を見つけだし、先回りしてオンになった時に、一気にパワー全開のプレーを見せるからこそ、彼の存在は相手にとって「えげつない」脅威となる。

 決勝トーナメント初戦となった流通経済大柏戦でも、彼のプレーは「えげつなかった」。これまではトップ下だったが、この試合はボランチで先発出場。「中盤でカウンターをケアするためと、ここでボールを支配するためにボランチ起用した」と藤吉信次監督が言ったように、彼の能力を高く評価しての起用だった。

 試合は激しい球際の攻防が展開される、ややヒートアップした試合展開。しかし、その状況下でも彼の表情は飄々としたままだった。全体を見渡し、「今日は縦に早く、ハイテンポの試合展開になっていたので、僕のところで落ち着かせるプレーを心がけた」と、ワンタッチパスやサイドに散らすパスなどを駆使し、テンポの強弱を生みだした。それでいて、チャンスとあれば一気にそのパワーで牙を剥く。

 26分、バイタルエリアで相手のクリアボールが宙に浮くと、素早く落下地点に入りこんで、落ち際をダイレクトで右足一閃。ボールはゴール右に突き刺さり、先制点をもたらした。

 そして36分には、高い位置でボールを受けると、「(1トップの)郡(大夢)を見たら、受けられる体勢になっていたので、僕がパスを出した後に、走りこんでポストを受けられるように、浮き球の多少ルーズなボールを出しました」と、DFを背負っていた郡にふわっとしたパス。その間に一気にペナルティーエリア内にダッシュをすると、郡がしっかりと収めてからの落しを、トップスピードで受ける。この突破に相手DFはたまらず足を引っかけて、渡辺を倒してしまった。このプレーがPKを導き、渡辺自身が落ち着いて決め、リードを2点に広げた。相手の状況、味方の状況を見て、自分が走りこんでリターンを受ける時間も計算してのプレー。彼の能力の高さを実証するシーンだった。

 2-0の勝利の立役者となると、準々決勝のFC東京U-18戦でも、ボランチとして攻守においてミスの少ない、安定したプレーを披露。「えげつない」プレーは出なかったが、特に守備面でセカンドボールの反応や、安定したボールキープで中盤を落ち着かせた。PK戦で敗れはしたが、ハイアベレージのプレーを見せた。

「もっと自分が冷静になって、周りを冷静にさせられる選手にならないといけない。仕掛けるところ、シンプルにつなぐところの使い分けを、もっと質を上げてやりたい」

 飄々とした表情の中に芽吹く高い意識。冷静かつ「えげつない」プレーをより効果的に、より脅威となるように。渡辺皓太の目指すところは、まだまだ先にある。

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