文＝峯嵜俊太郎 写真＝兼村竜介
「チーム全体の絶対勝つぞっていう気持ちが相手より強かった。それが出た試合だったので、自分のゴールが勝利につながって良かった」
決勝点を挙げた流通経済大学付属柏高校のDF黒澤丈は、試合直後のインタビューで興奮気味にそう語った。
11月8日に行われた平成27年度第94回全国高等学校サッカー選手権大会千葉県大会決勝トーナメントの準決勝、前回王者の流経大柏と習志野高校の一戦。流経大柏は序盤からハイプレスとロングボールを多用する戦術を採用し、ボールを敵陣に押しこむ展開が続く。その中で、黒澤は攻守にわたって効果的な働きを見せていた。
この日は右サイドバックとして先発した黒澤だが、元々はサイドハーフを主戦場としていただけあって、精力的なオーバーラップからクロスを供給し、チームの攻撃にアクセントをつけた。また、持ち前の身体能力の高さを活かして、守備では習志野が前線に放りこんだロングボールを、180センチの高さを活かしことごとく頭で跳ね返した。その空中戦の強さは攻撃面でも発揮し、チームの戦術の一つであるFW織田敦暉が放つロングスローの際には、重要なターゲットマンとなっていた。
多くの時間帯を攻めこみながらも1点が遠い流経大柏。スコアレスのまま延長戦に突入した中、チームを救ったのは、その黒澤だった。延長前半の85分、ついに待望の瞬間が訪れる。
右からのCK、攻撃参加に上がってきた黒澤はハイボールに競り合った直後、足元にこぼれたボールに誰よりも素早く反応。値千金のゴールを決め、チームを6年連続の決勝に導く大仕事をやってのけた。
決勝の相手となる市立船橋高校は、これまで選手権予選決勝で6度戦い、互いに3勝ずつを挙げている県内最大のライバルチームだ。
「どこが来ようと自分たちのサッカーをしっかりして勝つだけ」と闘志を燃やす黒澤。そんな黒澤に対し、本田裕一郎監督も「ここにきて上り調子、もっともっとできる」と期待を寄せる。決勝戦は11月15日、流経大柏が2年連続5回目の全国出場に向け、今シーズン4度目のライバル対決に臨む。
