文・写真=吉田太郎
東福岡は夏のインターハイ(平成27年度全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会)で2連覇を達成した。また高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯U-18サッカーリーグ2015プレミアリーグWESTでは首位と勝ち点1差の2位。今回の選手権予選では前半だけでシュート14本を放って4点をもぎ取り、4-0で快勝した筑陽学園との決勝を含めて激戦区の福岡県予選4試合を20得点1失点という圧倒的な強さで突破した。
東福岡は優勝候補の一角という評価の下で全国大会に臨むことになったが、彼らは入学当初から「弱い」「最弱」というレッテルを貼られてきた世代だった。実際に新チームは新人戦九州大会で3位に入ったものの、プレミアリーグの開幕戦ではセレッソ大阪U-18に1-6で完敗。U-17日本代表GK脇野敦至がビッグセーブを連発していなければ、屈辱の色はさらに濃くなっていただろう。
ショッキングな敗戦が選手たちの謙虚さを高めた。トレーニングで要求されるレベルは昨年以上に高くなったが、選手たちはそれに必死に食らいついた。脇野は「大きく変わったのが守備で、あの6失点からみんな守備の意識を高く持ってそれで守備が良くなってきたから攻撃もどんどんアイディア増やして良くなってきたと思う」。
部員数は300人に迫る。各地から集まってきているエース級の選手たちの平均値は間違いなく高いが、1学年上の世代のMF増山朝陽(現ヴィッセル神戸)やMF中島賢星(現横浜F・マリノス)に比べると見劣りがする。それでも高い意識を持ち、日々に取り組んできたからこそ、今の姿がある。主将のMF中村健人は「みんなプライドもありますし、先生、コーチにも結構言われるので愚痴りたくなることもあると思う。でもよく我慢してくれている」。全国総体で結果を残してもプレミアリーグでJクラブユース勢を破っても「選手権で負けちゃったらまた最弱と言われるので勝ち続けるしかない」(中村)という思いでトレーニングを続けてきた。そして森重潤也監督も「成長率では今までのチームで一番あるんじゃないかなと思います」と認めるチームになった。
選手権の全国大会は「最弱」という評価を見返す最大のチャンス。思いを持ち続けてきた“赤い彗星”が最弱からの全国制覇に挑戦する。