文=川端暁彦(提供:ストライカーデラックス編集部)
國學院久我山高校の地力が確かに優れていた試合だった。共にボール保持を重んじるチーム同士のつばぜり合いのような展開を経た前半終了間際、CKから國學院久我山が先制点を奪取。後半開始早々のスキをつかれて神戸弘陵学園高校FW土井智之に見事なボレーシュートをたたきこまれたものの、ここで動じることなくゲームを運び、50分に激しいプレッシングで相手ボールを奪ったところをFW澁谷雅也が蹴りこんで決勝点。DF野村京平を核とする守備陣の奮闘も光り、2-1での快勝となった。
「美しく勝つ」ことを目指し、パスワークを重んじるスタイルで知られる國學院久我山だが、今大会で目立っているのは守備力とフィジカル面の優位性かもしれない。この日も2回戦からの登場だった神戸弘陵学園を最終的には走力で上回り、最後は走り勝った印象すら残した。三栖英揮フィジカルコーチらの指導によるコンディショニングと体作りの成果なのだろう。
もちろん、フィジカルというのは走力だけを指す単語ではない。「ずっとやってきたフットワークのトレーニングの成果を感じる」と語る野村は、この試合で最も高いパフォーマンスを見せていた選手の一人。かつては苦手だったという足運びも、1年生の時から重ねてきたトレーニングで大幅に改善。後半開始早々の失点はチームとしての油断も感じる痛恨な形だったものの、神戸弘陵学園の強力な前線コンビに対して柔軟に対応し続けた。決して大柄ではないが、空中戦の対応も巧みで、簡単に競り負けたり、当たり負けたりすることもない。「ちゃんと(守備が)セットされている状態なら崩されることはない」(野村)という自信の発言も飛びだした。
野村は今年、1年生GK平田周を後方に、1年生DF上加世田達也を横に従えてゴールを守っている。さぞや苦労もあるだろうと思ったが、「平田は3年生みたいな風格があるので問題ないですよ」と笑いとばした。上加世田との連係もすっかり成熟しており、この日も意図的に縦関係を作って背後を狙ってくる相手に対して、巧妙にチャレンジ&カバーのバランスを維持し続けた。
次なる準々決勝、前橋育英高校戦での目標は「守った上で、点を取りたいです」と笑う。「いつも『俺に合わせてくれ』と言ってはいるんです」という男に、「合う」のか?組織された守備とは違う、特に練習していないという國學院久我山ならではの即興のセットプレーで守備の要が輝くのか、ちょっと期待してみたい。
(コメント)
國學院久我山
野村京平
前半の最初の方、よく集中切らさず守れたと思う。終盤にセットプレーのチャンスを相手に与えてしまっていたことは課題。自分が引っ張らないといけないという気持ちはある。夏合宿を終えてからチームとして粘り強さが付いてきたと思う。
名倉巧
守備ではチームにプラスになれたと思うけれど、点は取りたかった。最初は相手にペースを握られて(國學院)久我山らしいサッカーができなかった。最後まで走りきる練習をやっている成果は出た。(次戦の)前橋育英は強豪のイメージがあるし、勝ったこともないと思うので勝ちたい。
神戸弘陵学園
入谷子龍
結果を出すことだけを考えていた。後半の最初に(アシストが)できたけれど、逆転はできなかった。セカンドボールを拾えてなかった。
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