鈴木友也(3番)を中心に1失点に抑えたが、スコア以上の差を痛感させられた関東第一 [写真]=川端暁彦
昨年度の全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会(インターハイ)準決勝。関東第一高校(東京)は市立船橋高校(千葉)に僅差の勝負で敗れ去った。あれから1年を経て迎えた再戦は2回戦、シードされていた関東第一にとっては初戦のゲームだった。
結果は同じく1点差負けの0-1。ゲーム内容に関しても、差が縮まったとは言い難い。この試合に特化して言えば、むしろ差が広がったようにも見えた。前日からの連戦になって市立船橋に対して体力面では優位にあったはずだが、一方的にボールを支配されることで着実にスタミナを削り取られ、後半に相手が守りに入った時間帯で攻勢を維持するだけの精度と運動量が確保できなくなっていた。
「(市立船橋は)今、間違いなく日本で一番強い相手」。関東第一の小野貴裕監督は眼前に立ちふさがった“巨大な壁”をそんな言葉で形容する。Jの育成組織も参加する高円宮杯U-18サッカーリーグ2016プレミアリーグEASTでも首位を走る強豪に対し、ある程度までボールを支配されることは織り込み済みだった。だが、「あれだけボールを動かせる上にフィジカルも強い」相手に対して最後まで打開策を見出せなかった。
東京都リーグに当たるTリーグに所属している関東第一にとって、市立船橋は異次元の相手だったのは確かだろう。もともとポゼッションスタイルでボールを大事に保持することを得意としてきたチームだ。相手にボールを持たれて“自分たちのサッカー”を出せないストレス下で何ができるのか。東京都内での試合では問われることのない課題を突きつけられた。トップクラスのMFである冨山大輔がいるのはいいが、では彼が封じられるような流れのときに二の矢、三の矢があったのかと言えば、この夏の関東第一には「まだ」それがなかったということは言える。力負けだった。
巨大な「物差し」を得たゲームとなったが、1年前の夏とは違うポイントもいくつかある。一つは昨年のチームが春先からメンバーを固定して戦うことで練度を高め、夏にピークが来たチームだったこと。今年はあえて先発を各試合でシャッフルしながら競争を促し、幅広い選手にチャンスを与えてきた。「13、4番目の選手を出すと(チームパフォーマンスが)落ちてしまった」(小野監督)昨年のチームとは違うアプローチを続けてきた。
関東第一の夏は終わったが、夏をピークにしないための種まきは終えている。あとは市立船橋という物差しを得た選手たちがどう自覚して変わっていくかどうか。本当の良いチームは敗戦を機に強くなっていくチーム。関東第一がそんな集団なのかどうか。この夏休みの長い残り時間とその先のステージで問われることになる。
文=川端暁彦
By 川端暁彦