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【高校選手権展望】<関東第一>選手層の厚みと勝負強さが要因 東京都を制圧して全国へ

2017.12.28

[写真]=吉田太郎

 昨年度から数えて、都内のトーナメントコンペティションで続けている連勝は19に上り、現在は5大会連続優勝中。さらに19勝の内訳は1点差での勝利が12試合に、PK戦での勝利が2試合と、まさに驚異的な“勝負強さ”でここ数年の東京高校サッカー界を牽引している関東第一。ただ、小野貴裕監督が「『アイツの所は勝負弱いからな』っていうのを、ずっと言われていましたし、自分の耳にも入っていましたからね」と笑いながら話したように、少し前まではむしろ大事な局面での“勝負弱さ”に悩まされてきたチームだった。

 確かな技術に裏打ちされた流麗なコンビネーションサッカーを打ち出し、そのスタイルが多くの見る者の称賛を集める中、各大会で上位進出こそ果たすものの、2011年、2012年と2年続けて選手権予選で経験した決勝での惜敗を筆頭に、全国の懸かったステージではあと一歩で白星を挙げることができず、何度も悔しい結果を突き付けられてきた関東第一が、1つの転機を迎えたのは2015年。関東大会予選を制したチームは、そのままの勢いで総体予選でも東京の頂点に立ち、8年ぶりの全国切符を獲得。さらに乗り込んだ晴れ舞台でも清水桜が丘、大津、広島皆実など強豪を相次いで倒してベスト4へ進出。都にとどまらない注目を集める存在となる。

 ところが大本命として臨んだ選手権予選では、主力の一部が欠場した準々決勝でまさかの敗退。その時、指揮官は大きな落胆と引き換えに、「勝つために必要な」ラストピースを悟った。それは『絶対的な選手層の厚さ』。その時々で個々の調子に左右されない明確なベースを基に、その時々でゲームに適した選手を躊躇なく起用していくことで、「誰が出ても良い状態」を意識的に創り上げていく決意を固める。

 迎えた2016年。2年連続で夏の全国出場を勝ち獲ったチームは、それでもさらに戦力となるラージグループの輪を広げつつ、初の戴冠を引き寄せるべく選手権予選に挑む。準々決勝では後半のラスト5分まで2点をリードされながら、凄まじい執念を見せて追い付き、延長戦の末に辛勝。着実にトーナメントを勝ち上がると、成立学園とのファイナルも我慢の時間が続く中で、林健太の綺麗なオーバーヘッドで記録した1点を守り抜き、悲願とも言うべき冬の全国初出場を達成。「色々な支えてくれた人たちの想いが1つ1つ積み重なって、僕とかチームにくっついてくれたのかなって思います」と小野監督は語ったが、まさに嫌というほど悔しさを味わってきた先輩たちの“想い”の積み重ねが指揮官の腹を括らせ、関東第一は新たなステージへ足を踏み入れることとなった。

 関東大会予選、総体予選、選手権予選と都内三冠を手に入れた2017年も、シーズン序盤から様々な選手がピッチに立ち、その時々で勝利の一翼を担ってきた。関東大会予選では3年生の今野綾仁がスケールの大きいプレーでチームにアクセントを加えると、総体予選では2年生ストライカーの池田健太がブレイク。準々決勝で公式戦初ゴールを叩き出し、勝てば全国出場が決まる準決勝でも唯一の得点をマーク。さらに決勝でも驚異の3戦連発を記録して優勝に貢献したが、今野も池田も昨季はほとんどAチームの試合に絡めなかった選手である。

 また、全国総体では1年生ボランチの佐藤誠也が台頭。準々決勝の市立船橋戦でも豪快なミドルを叩き込み、その実力をディフェンディングチャンピオン相手に証明してみせる。さらに選手権予選では、夏の全国で17人のメンバー入りが叶わなかった1年生の田中大生と貝瀬敦がスタメンを勝ち獲り、安定したパフォーマンスを披露。チームも2年連続となる冬の全国出場を堂々と手繰り寄せた。「メンバーは毎試合入れ替わったんですけど、その中でも勝ちを拾ってこれたのは、チーム力が少し上がってくれたんじゃないかなと思っています」と小野監督も認めた通り、今シーズンも『絶対的な選手層の厚さ』が負けない強さを構成する最大の要因であることに疑いの余地はない。

 とはいえ、チームの骨子となるセンターラインには替えが利かない選手が揃う。まずは守護神の北村海チディ。全国総体でも優秀選手に選ばれた2年生GKは、全身バネのような身体能力を武器に、思わず「残念、そこは北村海チディ」と言いたくなるようなプレーを連発するビッグセーバー。昨年度の選手権開幕戦がAチームの公式戦デビューだったセンターバックの小野凌弥は、今季のキャプテンとして最後尾からイレブンを鼓舞し続けてきた中で、「チームが1つになってきた感じがします」と手応えを口にする。

 そして大黒柱は、ボランチとフォワードを高次元でこなす篠原友哉。3年生の中でただ1人だけ昨年度の夏と冬の全国をピッチで経験している10番は、今年に入って大事な局面でのゴールが少なくない。とりわけ全国総体3回戦の広島観音戦では、0-0で突入したPK戦濃厚の後半アディショナルタイムに力強く決勝ゴールを奪うなど、チームを勝たせる選手に成長。本人も「自分がやらなきゃいけないというのは、いつも気持ちとして持っています」と強い自覚を携え、高校最後の大舞台を待ちわびている。

 選手権予選を連覇で終えた小野監督は、決勝の試合後にこう語っていた。「目の前の相手にちゃんと勝つことが我々の使命だと思いますし、勝って少しでも結果を残してやっていくことしか、負けたチームに対しても報いる方法はないのかなと思っています」。“勝負弱さ”を指摘され続けたかつての面影は、すっかり消えた。すべては勝利のために。徹底して“勝つサッカー”を突き詰めてきた関東第一が、この冬の主役に躍り出ても何ら不思議はない。

取材・文=土屋雅史

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