殊勲の活躍を見せた吉田(左・背番号3) [写真]=兼子愼一郎
劇薬に見えたが、確信があったそうだ。初戦に臨んだ昌平はレギュラー2枚を入れ替えていた。負傷を抱えてコンディションが上がっていなかった中盤のキーマンであるMF山下勇希と技巧派のレフティ、MF古川勇輝をベンチに置いて、パワフルさを持つ伊藤雄教をトップ下に、DFの控えと見られていた吉田航をボランチに配置したのだ。
選手権開幕の前週に行われたプリンスリーグ関東参入戦で試合内容も悪いままに矢板中央に敗れるなど、大会前の昌平の状態はポジティブではなかった。藤島崇之監督はチームの心臓と言うべき中盤にメスを入れる決断を下し、控え組にいた二人を先発へ抜擢した。第一の理由はシンプルで、「練習でも紅白戦でも良いプレーを見せてくれていたから」(藤島監督)。
もちろん、フィジカル勝負の展開を好む広島皆実に対して、その点で対抗できる伊藤を使うという戦術的な狙いもあった。山下の出場時間を限定することで、「彼のような選手が途中から出て来たら嫌でしょう」という、これまでチームに不在だったスーパーサブ役を託せるというメリットもある。また吉田については、「チームメートからの信頼・評価が非常に高い」(藤島監督)という点でも確信があったのだと言う。
吉田は背番号3という数字から分かるようにDF登録の選手だ。控え組の出場した埼玉県1部リーグの最終節ではセンターバックとして先発しているし、負傷者の出た6月の関東大会では右サイドバックとしてプレーしていた。それが選手権開幕の前々週の練習から控え組の中盤の底に入ることになり、ちょっと違う味を見せていた。
「もともと中学時代はボランチの選手でした。ただ、(起用してみたら)彼がレギュラー組を完封してしまった。ディフェンスの部分からゲームをコントロールできる選手」(藤島監督)
それまでDFとして使われることから分かるように、守備力には元より定評のある選手だ。「ボランチでプレーするときに意識している選手は(ブラジル代表の)カゼミーロ。セカンドを拾ったり、ゲームを読みながら守備に行くところが持ち味」と自認する黒子タイプで、ボールを持ってからは「とりあえずミスをしないことを意識していた」とシンプルなプレーに徹した。このプレースタイルが“上手い”選手の多い昌平において意外なほど効果的で、初戦らしい何とも“硬い”試合になる中で際立つこととなった。
PKをストップして試合のヒーローになったGK緑川光希も「セカンドボールをほとんど回収してくれるし、ボールもしっかり散らしてくれた」と吉田の出来を称賛。選手層の厚みを示せたという意味でも、今後に向けてポジティブな材料と言えるだろう。次の相手は清水エスパルス内定のMF高橋大悟を筆頭に技巧派がそろう神村学園だが、そこでも守備の仕事師・吉田の存在は“効く”ことになるかもしれない。
取材・文=川端暁彦
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By 川端暁彦