先制点を喜ぶ高川学園FW山本廉哉 [写真]=山口剛生
高川学園の2年生FW山本廉哉は、2つ上の兄の背中を追って高川学園に入った。兄・駿亮(現・徳山大)は昨年度の選手権で10番を背負い、注目FWとして存在感を放った。だが、チームは初戦で鹿島学園に1-2の敗れた。
駿亮もノーゴールに終わり、エースの責務を果たせず涙を流す兄の姿をスタンドから見つめていた当時1年生だった弟は、「フィジカルもあって、上手さもあって、兄は僕の中で憧れの存在。でも、その兄がゴールできずに終わったのを目の当たりにして、『兄が出来なかったことを俺が絶対にやる』と心に決めた」。そして今年、2年生からレギュラーを掴むべく、意気高く迎えるも、彼の前には大きな壁が存在した。185センチの大型FW土信田悠生が1トップとして君臨したことで、181センチの彼は常に『土信田の控え』だった。
常に土信田と比べられる日々。途中出場で投入されて2トップを組んでも、土信田のところにはボールが集まって来るが、自分のところには集まってこない。だが、その状況にも腐らず「土信田さんも兄の次に憧れの存在。でも、ライバルでもあるので、絶対に負けないように力を磨こうと思った」と悔しさを味わいながらも、「兄の無念を果たす」一心で日々の練習に取り組んだ。
その熱意は、ピッチ外の行動にも現れていた。合宿で食事をするときは必ず江本孝監督の前に座り、バスの中では江本監督の隣に座った。江本監督には「アピールです」とは一言も言わず、ただひたすら前に座り続けた。この熱意が待ちに待った選手権の舞台で常に結実した。
「なぜか廉哉はいつも僕の前に座るんです。『使え』というアピールなのか、どうなのか分からないのですが、やる気に満ちているのは間違いないと思ったし、あいつは最近凄く身体を張れるようになって、兄と同じでスピードと足下もあるので、パワープレーをしながらも、ボールも運べる貴重な戦力になりつつあった。全国は絶対に土信田がマークされるし、廉哉の起用は効果的だとも思っていたので、今日の試合は途中から使おうと思っていた」(江本監督)。
選手権初戦の清水桜が丘戦。山本はベンチスタートで1トップは土信田が出場をしていた。「絶対に出番があると思った」と信じていた彼に、0-0の緊迫したシーンで出番が回って来た。67分、品部真完に代わってピッチに送り出されると、75分、田近洸貴の放った左FKに反応。「GKが飛び出して来たのが見えたので、先に飛んでGKのミスを誘おうと思った」と高くジャンプすると、相手GKがキャッチミスをし、ボールは下にこぼれた。
着地と同時に身体を反転させ、こぼれ球にいち早く追いつくと、ゴールカバーに入った相手DF2人の位置を良く見て、シュートをゴールに突き刺した。「まさか本当にミスをするとは思わなかったけど、江本監督から常に『セカンドボールの反応を早くしろ』と言われていたので、ボールがこぼれるのが分かった瞬間に身体が動きました」と振り返る、緊迫した均衡を崩す貴重な先制点。兄が果たせなかったことを、弟の彼が見事に果たした。
試合は78分に追いつかれ、1-1のPK戦に。4人目のキッカーとして登場をした山本は、冷静にGKの逆を突いて決めると、清水桜が丘4人目の白井海斗のキックはGK安部洋一郎がセーブ。5人目の浜下光輝が決めた瞬間、高川学園の3年ぶりの初戦突破が決まった。
「常に試合に出たいアピールを江本監督にしていました。最近はバスの隣の席は座れなくなりましたが、食事はずっと前に座って食べています。ゴールを決めることが出来たのは素直に嬉しいし、何より2年生で結果を出せたことが嬉しい。監督の言うことをしっかりと聞いたことと、アピールが成功したと思います。兄に良い報告が出来ます」
まさにピッチ内外の熱意が生み出したゴール。このゴールをきっかけに、来年のエースへの階段を駆け上がるべく。山本廉哉は兄の思いも背負って、2年の冬を駆け抜ける。
取材・文=安藤隆人
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