文=川端暁彦 写真=瀬藤尚美
3戦全勝の無失点で準々決勝へ駒を進めた東京都U-12は、単独チームで参加する東京ヴェルディジュニアを除いた東京都の少年サッカーチームからピックアップされた選手で構成される選抜チームだ。昨年は決勝で惜しくもFCバルセロナに敗れたが、準優勝の好成績を収めており、今回も“打倒バルサ”の有力候補である。
ただ、昨年のチームからスタイルが大きく変わった印象もある。大型選手を前線の柱に据えて個人で勝負できるチームだった昨年から一転、守備にベースを置いた渋みのあるチームに仕上がっているのだ。選抜チームは監督の色が出るものなのだが、実は今年の監督も昨年と同じくFCトリプレッタの米原隆幸氏なので少し不思議な気持ちもあった。
米原監督は「昨年のチームと色が違うのは当然ですね」と、こちらが勝手に感じた「違い」を認めつつ、その理由について「昨年は横河武蔵野FCさんが東京都の中で図抜けたチームだったので、彼らをベースにして東京都U-12のチームを作ったんです。でも今年はそういうチームがなくて、一つのチームから選んだのは多くても3人ですよ。ベースになるチームがないから、選手の良さをどう活かすかをまず考えながらチームとしてまとめていく方向です」と説明してくれた。
とはいえ、「4回しか練習しない」チームを大会までに形にするためには、適当に選手を組み合わせるのではなく、ベースが必要になる。「4バックの人選だけは早めに決めましたし、すぐに決められるだけの実力がある選手もいましたから。後ろの4人をベースにしながら、前の組み合わせについては実際にやりながら、いろいろな組み合わせでトライさせています」(米原監督)。昨年と異なり、後方にベースを置いたチーム作りというわけだ。また、「いざ大会に入ると、独特の雰囲気の中で力を出せない選手もいれば、逆にこちらが驚くプレーを見せてくれる選手もいます。そういう性格的な部分も見ながらやっている感じですよ」と、選抜チームならではの工夫と苦労を語ってくれた。
そして、最大の課題は前回大会の決勝で敗れている「バルセロナにどう勝つか」ということである。米原監督は「昨年は身体能力の差が絶対的にあるので、体の大きい選手でないとバルサには対抗できないと思っていました。ただ今年は一番にテクニックを重視して選んで見ています」と言う。守備に計算のできる4枚を並べ、攻撃ではテクニックがあってボールを持てる、回せる選手を選んでバルサに挑むことになる。
「この大会でしかできない経験がありますし、普段は大きな舞台に立つチャンスのないチームの選手もそこに挑戦できるのが選抜チームの良さであり、面白さ。いざ選んでみて『この選手、ここまでやれる選手だったのか!』と、こちらが驚かされることも多いんです。米原監督はそんなサプライズ含みの選手を率いて、存分にチャレンジする腹づもりだ。