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「観る」者にも大きな影響を及ぼした異文化との激突/U-12ワールドチャレンジ

2015.08.31

文=川端暁彦 写真=兼子愼一郎

 8月27日から30日まで4日間をかけた熱戦が繰り広げられた『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ』。今年は初めて南米アルゼンチンからデポルティボ・カミオネーロスも参加。異文化衝突の趣を強めた大会は、参加したそれぞれの選手と指導者のみならず、観戦に訪れた選手と指導者にも大きな刺激になったことだろう。

 PK戦の末に決勝で惜しくも敗れた東京都U-12の米原隆幸監督は「今年の選手たちの中には昨年、一昨年の大会を実際に観ていた選手たちがいた。それが生きた面はあると思うし、今年の試合を観ていた選手たちも、また何かを感じてくれたのではないか」と来年への種まきという意味での期待感を語ってくれた。

 2年連続で東京を率いた米原監督は選手選考から練習、そして試合での采配に至るまで昨年の反省をフィードバックしていた。勝利を目指すという大目標から逆算しての行動だが、コーチングスタッフの継続性あってこそと感じる場面が多々あった。練習試合はすべて中学生と組み、試合前の心理的な準備にも気を遣った。「3度目の挑戦だった今年になって初めて、バルセロナに対して構えるのではなくチャレンジできた」という米原監督の言葉は、図らずも大会が「継続」した価値を教えてくれている。

 3度目の大会で選手たちも指導者たちもバルセロナに対する良い意味での「慣れ」があり、「倒してやろう」という気概もあった。その相手を倒しながら同じスペインのRCDエスパニョールにタイトルを持って行かれてしまったのは皮肉な結末にも思えるが、しかし「来年」に向けた確固たるモチベーションともなるだろう。

 異文化との激突は選手を鍛え、指導者に学びを与え、そして恐らく審判にも貴重な経験値を与えている。出た選手だけでなく、大会を「観る」者に大きな影響を及ぼすのも、各チーム単位で行う海外遠征との決定的な違いだろう。こうした大会で積み上がるものは小さなものかもしれないが、少しずつ「残って」もいる。第3回大会は、それを確信できる場となった。

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