写真=©NIKE
欧州トップレベルの指導者によるトレーニングが始まる
ピッチにスペイン人コーチの声が響き渡る。
「チャンピオンズリーグ決勝、同点で迎えたロスタイムの状況をイメージするんだ!」
声の主は、イバン・パランコ。UEFA 最高位のコーチングライセンス「UEFA Pro」を保持する欧州トップレベルの指導者だ。ナイキジャパンが行っている育成世代のサポートプログラム「NIKE FC」は、スペイン国内外で豊富な指導経験を持つ彼を特別コーチに迎え、
「うまくなりたい」、「目標を達成したい」と願うプレーヤーに、さらなる成長を促すトレーニングセッションを開催した。
中学生から大学生まで54選手が参加
6月下旬の第1回では、中学生から大学生まで54選手が参加。レッズランドで行われた約4時間にわたるトレーニングで、イバンの指導の声は絶え間なく続いた。
「次のプレーにすぐに移れるように、視野を作れる体の向きにするんだ」、「目線は、まず深いところを確認しよう」。トレーニングの始めに行われたボール回しから、実戦を意識させた言葉が飛ぶ。
前半の2時間のトレーニングは、ボール回しから、7対3にフリーマン1人を加えたロンドを実施。そして、ピッチを3分割にしてポジションごとに動ける範囲に制限を設けた、8対8にフリーマン1人を含めたゲーム形式へと移行していく。ロンドでは3人目の動きを意識させ、ゲームではサイドの選手が中央深くまでボールを追えば、「ポジションを守ろう。自分がボールに寄ることでスペースは潰れてしまう」と声を上げる。時にプレーを止めて細かに説明し、時に自ら実践することで、選手たちにプレーの明確なイメージを落としこんでいく。
そして、指導の中でも大きなインパクトを与えたのが冒頭の言葉だ。今回のメインテーマである決定力を高めて“強烈な個”を持った選手を生み出すことを目的にして、セッション後半の2時間で組まれた「HYPERVENOM TRAINING」でのワンシーンだ。
アタッキングサードで3対2からシュートに持ち込むトレーニングでは、GKがシュートをこぼすシーンを想定。GKの弾いたボールを詰める場面は、実際の試合で90分の内に必ず訪れるというわけではない。しかし、決して大きな可能性があるプレーではないものの、イバンはプレーヤーたちに他のあらゆるプレーと同様に反復練習を求め、明確なイメージを植えつけようとした。
「日本人を教えているとよくあることは、『練習で最後までできた』、『ゴール前に詰めるところまで一所懸命できた』というところ。しかし、実際に試合でできるかとなれば、できない選手がすごく多い。それは、練習の時点で試合でのプレーを頭の中でイメージできていないから、そういうシチュエーションに陥るのではないかと思っている。だから練習で、実際の状況をイメージできるような一言を言うんだ」
練習のための練習ではない
練習を練習のままで終えてほしくない。イバンの思いは、トレーニングの始めに行われたボール回しから一貫して変わらない。体の向きやパス一つとっても、次のプレーの布石となるような動きを求める。「体の向きで視野を確保するんだ」と。「出せるなら、ゴールに近いプレーヤーにパスを出すんだ」と。
「HYPERVENOM TRAINING」の最後は、5対5にフリーマンを1人加えたスモールゲームが組まれた。いたるところがシュートレンジとなる狭いエリアでのゲームは、トレーニングの応用がすべて凝縮されたシチュエーションだ。
ボールを持てば即座に相手選手が寄せてくるような状況下での、ボールを受ける際の体の向きや味方の位置確認の必要性は言うまでもない。密集した相手を崩すには、3人目の動きやスペースを作り出すことは不可欠だ。最後にシュートの意識、そしてこぼれ球――。
「ゴールを決めるということは才能だけではなく、ハードワークも必要。今日の練習でのシチュエーションも、それが絶対にゲーム中に起こり得るかと言ったら、何回かに1回しか起こり得ない。しかし、練習でやっておかないといけない」
イバンはトレーニングの内容をスモールゲーム内で実践できなかった場合は、相手にPKを与えるペナルティーを設けた。それほど、短時間でプレーヤーの体に染みつかせようという工夫の現れだったのだろう。
「HYPERVENOM CAMP」への権利を手にしたのは
「HYPERVENOM TRAINING」を含むトレーニングセッションは、今年3開催を予定している。各セッションで選出されたプレーヤーたちは、さらなるレベルアップのための特別プログラム「HYPERVENOM CAMP」に参加できる。
第1回の今回は、54選手から8選手が選ばれ、参加権利を手にした。その内の一人である大学2年生の田中祐希は収穫について問われると、「普段より練習の質も、周りのプレーヤーの質も高かった。すごく刺激になり、年下でもみんなうまかったので成長できました」と語る。そして、意識の変化も見逃せないところだ。
「最後のスモールゲーム。あの狭いエリアで、いかに打開するのか。常にシュートを意識する気持ち。普段はシュートをしないところでも、今後はシュートの意識を持とうと思う」
こぼれ球は信じ続けた人にだけに来るプレゼント
所属チームのトレーニングに、プラスアルファの経験をもたらす場である「NIKE FC」。イバンはトレーニングの最後に、プレーヤー全員に語りかけた。
「こぼれ球はいつか来ると信じ続けた人にだけに来るプレゼント。信じて前に進んでほしい」
練習のための練習ではない。そして、練習でできないことは試合でもできない。“強烈な個”を生み出すには意識の向上が不可欠だ。
「HYPERVENOM TRAINING」は、7月20日に再びレッズランド、7月29日にはJ-GREEN堺で行われる。そこから選び抜かれたプレーヤーは8月開催の「HYPERVENOM CAMP」で、さらなるレベルアップの機会を手にする。
“強烈な個”を生み出す機会は、まだまだ残されている。
8名の合格者は、以下の通り。
MF田中祐希(resfala)
FW横田風真(八潮高)
FW坂巻一輝(豊島学院高)
FW小山彩武(光明学園相模原高)
FW馬場航平(光明学園相模原高)
MF大崎泰河(多摩大学附属聖ケ丘高)
MF徳本魁人(多摩大学附属聖ケ丘高)
MF石井達大(実践学園高)