文=木下彰(慶應スポーツ)
優勝争いを繰り広げる中で迎えた、今節の相手は専修大学。幸先よく先制点を奪ったものの、その後は押しこまれる時間が続いてしまう。1点のビハインドを負って迎えた後半のアディショナルタイム。ラストプレーとなったCKから宮地元貴がゴールを決め、土壇場で同点に。これによって2位の早稲田大学に得失点差で上回り、第2節以来となる首位に立った。
リーグ戦ではここ9試合負けなしと、着実に勝ち点を積み重ねている慶應義塾大学。さらにこの試合の前日には、前節時点で首位に立っていた国士館大学が敗戦。優勝争いから一歩抜けだす「大きなチャンス」(手塚朋克)という意識を持ちながら、キックオフを迎えた。
最初の好機はCKからだった。3分、山田融が右足でボールを入れ、ファーサイドで宮地が折り返す。山本哲平のシュートは相手にクリアされるが、その前にゴールラインを割ったという判定。2試合連続で、序盤にリードを奪うことに成功する。13分にもワンタッチで見事なパスワークを展開。最後は手塚がクロスを上げるも、味方にはつながらず。その後は相手のボール回しに翻ろうされ、的を絞ることができない。31分には山本、39分には山田と、カウンターからフィニッシュに持ちこむシーンも見られたが、逆に相手のシュートがポストに当たるなど肝を冷やす場面が続く。すると、前半の終了間際にはセットプレーから失点。試合運びに不安を抱えたままハーフタイムに突入する。
「相手に押されていても1-1だから、これから仕切り直していこう」(須田芳正監督)。慶應大は後半の頭から、渡辺夏彦に変えて松木駿之介を投入し、立て直しを図る。しかし、依然として劣勢は変わらず。それでも望月大知などが身体を張り続けると、67分に反撃。松木が味方とのワンツーでペナルティーエリア内へ。一対一の局面を迎えるも、ボールはわずかに枠の外。その4分後にもゴール前で山本が左足を振り抜くが、これも決まらず。立て続けに訪れた絶好のチャンスをものにできない。
終盤は攻め合いとなり、迎えた89分。ペナルティーエリア内にこぼれたボールが相手の足元に。シュートを浴びると、DFに当たったボールが無情にもゴールに吸いこまれていく。痛恨の逆転ゴールを許し、「諦めてはいなかったですけど、正直厳しいかなと思った」(山本)。
アディショナルタイムは2分。前線へ素早くボールを供給するが、焦りでミスが頻発してしまう。それでもCKを獲得。時間を考えるとこれがラストプレー、GKの宮原隆志も攻撃参加する。井上大が蹴ったボールはクリアされるも、こぼれ球に反応した手塚がシュート。ゴール前が混戦となり、最後に反応したのは宮地だった。気持ちでねじ込むと、両手を広げてベンチへ一直線。喜びを爆発させたと同時にタイムアップのホイッスルが鳴った。
まさにドラマチックな展開となった。だが、「全体的には専修大にやりたいようにやられてしまった」(宮地)のが現実。そして結果は引き分け。試合後のインタビューでは、ポジティブに勝ち点1をとらえつつ、反省点にも言及したコメントが相次いだ。
さて、次節は伝統の早慶戦である。早稲田大はリーグ戦7連勝などを経て上位に食いこみ、前節の流通経済大学戦でも勝負強さを発揮と、まさに強敵だ。加えて現在2位に付けているため、いわゆる「天王山」。「特別な意味」(宮地)を持つ一戦であることに違いはない。
慶應大はこれまで、常に目の前の一戦を全力で戦うという意識を徹底させてきた。冷静に戦況を振り返り、次の試合に備える。開幕からスタンスを変えなかったからこそ、首位にも立つことができた。自力で優勝する可能性を残す今だからこそ、早慶戦であろうと、自分たちのスタイルを貫く。そうすれば、おのずと勝利の女神が微笑むはずだ。
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