文・写真=平柳麻衣
筑波大学との激闘を制し、涙の残留を果たしたあの日から約1年。創部88年の歴史を誇る中央大学は、10月31日に行われたJR東日本カップ2015第89回関東大学サッカーリーグ戦第20節で明治大学に1-2で敗れ、2部降格が決定した。「去年のつらさをわかっている選手が多く残っていたので今年はいけると思ったけど、チームとしてまとまれなかった」と主将の小出啓太は唇を噛んだ。
“縦に速いサッカー”を掲げてスタートした今シーズンの前期は、第12節終了時点で得点ランクトップに立っていた2年生のFW矢島輝一を中心に、リーグ2位タイの17得点を挙げるなど攻撃陣は奮闘していた。しかし、リーグワーストの23失点を喫した守備のもろさが原因で波に乗りきれず、3勝2分け6敗の勝ち点11で10位。チームは夏の中断期間中に守備の立て直しを図り、引いて守るサッカーへとスタイルを変更した。この大幅な戦術変更に戸惑いを隠せない選手もいたという。
後期は対戦相手に合わせて戦術を変更して臨んだが、成熟度の差は明白で、「チームの軸がなく、どう守備をするか統一できないまま失点が増えていった」(小出)。後期開幕から重ねた失点は、第20節までの9試合で27点。一度狂ってしまった歯車を戻すことはできず、2節を残して無念の降格となった。
中央大の2部降格は、中村憲剛(川崎フロンターレ)が3年生だった2001年以来、2度目となる。当時は翌年2部で優勝し、1年で再昇格を果たした。「中央大は1部にいるべきチームだとみんなで話したし、すでに来年を見据えて切り替えている。憲剛さんの代のように、1年で戻ってきたい」とFW内田祐介。そのためには、「中央大のサッカー」と誰もが口をそろえるチームの原点を確立することが必須だ。
第5節で強豪の明治大学に3-2で競り勝つなど、1部で戦える力を持っていることは間違いない。第17節では流通経済大学に敗れたものの、3-4と接戦に持ちこみ、敵将の中野雄二監督は「迫力があり、とても最下位に沈んでいるチームとは思えない」と試合後に語っている。
ただ、昨年降格した筑波大学も現在、昇格枠を巡って大接戦を繰り広げているように、2部リーグも決して楽に戦えるわけではない。険しい昇格サバイバルへ弾みをつけるため、そして名門校のプライドを懸け、まずはここまで全敗の後期リーグで必勝を誓う。古豪復活への道のりは、すでに始まっている。
By 平柳麻衣