文・写真=村田真奈美(スポーツ東洋)
チーム内で随一の強さを誇り、この夏、東洋大学快進撃の立役者の一人となった瀧澤修平。格上相手との対戦で光った彼の強さの秘密を探る。
東洋大サッカー部に入部したばかりの瀧澤は死にたくなるほど絶望していた。高校時代まで意識してこなかった論理的に考えるサッカーへの理解が追いつかず、惑いを隠すことができなかった。自身が得意とする対人の強さなども発揮できず思うようなプレーができない日々が続く。
「けがでもしちゃいたい。そう思っていたら本当にしてしまった」
入部後間もなくして、半月板を損傷してしまう。全治8カ月の大けが。しばらくはリハビリの日々を送ることとなる。それでも、瀧澤はその時間を決して無駄にはしなかった。グラウンドから離れ、練習を見つめる中でチーム戦術や状況判断能力を次第に理解していった。「頭が整理できたことで、チームでやるべきことをやりながら自分の強みも出していけることができた」と話すようにこの期間こそが彼を成長させた。
けがから復帰した瀧澤は段々と頭角を現し、Aチームへと昇格を果たす。昨シーズンは8試合に先発し、最終節では公式戦初ゴールも記録した。そして迎えた今シーズンは守備の要として期待されていたが、4節の産業能率大学戦で肉離れを起こし再び戦列を離れることとなる。
大学生活最後の1年。次のステージに進むためにもその意味は選手にとって大きい。リーグ戦開幕後の離脱はショックも大きかった。それでも決して後ろ向きにはならなかった。地道なリハビリと体作りに励みさらなる自身の成長につなげた。その成果もありアミノバイタルカップ2回戦の国士舘大学戦で先発復帰を果たす。
「絶対に自分がストライカーを抑えるという強い気持ちで臨んだ」
当時、1部首位を走っていた国士舘大はワントップにロングボールを集める作戦を取ってきた。そんな相手FWと対峙した瀧澤は対人の強さを活かし、競り合いでは決して負けない。相手FWに仕事を一切させず、途中交代へと追いやった。この試合で自身のプレーが1部チームにも通用することを実感し、大きな自信となった。
鮮烈な復帰戦を飾ったその後も、格上相手との対戦となったトーナメント戦で郡司昌弥とともに鉄壁なディフェンスを構築した。この男の復帰が遅れることがあれば、この夏の歓喜は訪れなかったと言っても過言ではない。
「正直悔しいです」
いつも、はきはきと質問に答えてくれる彼も、この時ばかりは声が小さくなった。後期リーグが開幕すると出場機会を失っていった。2部リーグでは相手が守備的なフォーメーションを取ってくることが多い。そのため、リーグ戦はDFラインもビルドアップなど攻撃面に重点を置く。現在はそのような能力の高い浦上仁騎が起用されている。それでも、ベンチではチームを盛りあげ、最後まで途中出場に備えている。そんな瀧澤を古川毅監督は「非常に真面目で堅実な人間。プレーもそのとおりである。腐ることなくトレーニングを続けてくれている」と称した。さらに瀧澤自身も今の現実を決して悲観的には捉えていない。大学卒業後もサッカーを続けることが目標であり、将来を見据えているからだ。
「途中交代で出ることは一番難しい。これから先、ベンチで迎えることもあると思う。準備の仕方は勉強になる」
自身にとってどんなに負の状況でもすべてをポジティブに捉える。2度のけがを経験した時も、そして今も。その思考こそが彼の成長を支える原動力である。これから訪れるどんな困難でさえもポジティブディフェンダーは成長への糧にしてしまう。その成長は天井を知らないだろう。
------------------------------------------
選手のプロフィールはスポーツ東洋のホームページ(http://sports-toyo.com/news/detail/id/2928)をご覧ください!