(協力 一般財団法人全日本大学サッカー連盟)
取材協力=株式会社フロムワン、写真=小林浩一
アパマンショップPresents平成27年度第64回全日本大学サッカー選手権大会(通称:インカレ)が12月8日より開催中。大会は明日16日の準決勝、19日の決勝を残すのみとなっています。最終回となる今回は、日本サッカーを辛口で斬ってきた、全日本大学サッカー連盟広報委員でもあるセルジオ越後氏のインタビューをお伝えします。
インカレは天皇杯に次ぐくらい日本のサッカーの大事な大会
――セルジオさんは全日本大学サッカー連盟広報委員としても活動されていますが、セルジオさんの考える大学サッカーの魅力とは何でしょうか。
「歴史が古く、伝統があることだと思います。Jリーグがない時代からずっと続いていて、大学サッカーがあったから今のJリーグがあるかもしれない。社会の変化があってもずっと続いているし、インカレは天皇杯に次ぐくらい日本のサッカーの大事な1つの大会だと考えていいと思う」
――Jリーグが出来たことにより大学サッカーはどのように変化したのでしょうか。
「Jリーグもまだ歴史が浅いけれど、Jリーグができたことによって大学サッカーは学生らしさがなくなった。プロが出来ることによって戦う意識が薄れてきたのかもしれない。マスコミなどの露出のことを考えると、大学サッカーはJリーグに劣るけれど、そこは競争するところではないよ。もし大学側が打倒Jリーグと考えるならば組織改造が必要になってくる。そういうことではなく、学校行事の頂点が大学サッカーの大会であると考えるべきだと思うよ」
――では大学らしさ、を活かして今後大学サッカーの観客動員数を増やすにはどんな工夫が必要なのでしょうか。
「まずは、お金と人。ビジネス的に捉える必要が出てくる。アメリカで大学は高校から文化的に発展していて興業的に売れる社会になっているよね。
高校サッカーみたいに間に広告代理店がいて、中継を独占するとかの働きかけがあれば、可能性はあるかもしれないけれど、今は難しいね。甲子園や高校サッカーとかの高校生の大会はかなり盛り上がっているけれど、それは高体連と大学連盟の環境の違い。伝統や組織の魅力の違いは競争できるものではないよ。各都道府県の代表として戦っている高校サッカーに比べて、大学サッカーは教育現場の頂点でもあるから数が少ない。構造的な問題を比べないことが大切だと思うよ」
――なるほど。それでは観客動員数を増やすには何から始めるべきなのでしょうか。
「サッカー部のOBだけではなく、どの大学にもたくさんのOBがいる。彼らは、大学の同窓会ではみんな心から校歌を歌うでしょう。国際試合だったら、スタンドのお客さんが立って、みんなで国歌を歌うよね。それと同じように、観客みんなが校歌を歌えば盛り上がると思うんです。やっぱり学生時代というのは青春の思い出だから、みんなが集まりやすいはず。そういう文化を作るというのがいいと思うよ。そう考えると、一つのターゲットとしてOBに目を向けるべきだと思う。常に現役の学生や親だけに目を向けているのではなく、母校が戦うから応援してください、と声を掛けるべきだよ」
――サッカーというよりは“学校”そのものにアプローチする、ということでしょうか。
「そう。甲子園や高校サッカーだって、部活ではなく学校単位で盛り上がっているのだから、大学サッカーも学校単位で盛り上げることが必要だと思う。特にインカレはテレビ中継があるのだから、盛り上がっている様子を映し出せば、もっと放送したいというテレビ局が増えてくるかもしれない。選手たちは、良い舞台を作れば良い試合をやってくれる。良い試合をするから良い舞台になるというのは間違い。見られる喜びがなければ、スポーツ選手から生まれる感動は何もないよ」
――選手個々の魅力、実力についてはいかがでしょう?
「そうだね。あとは目玉をどう作るか。A代表の選手が大学でもいればいいと思うなあ。昔は早稲田大学の釜本邦茂さんや明治大学の杉山隆一さんなど、大学在学中に日本代表で活躍する選手がいたけれど、プロができてそういう状況はなくなった。以前の日本代表は日本リーグ(JSL)と大学の選手で構成されていて、大学のなかには日本リーグより強いところもあった。日本リーグの多くが企業チームだったから、就職先としてはある程度学歴が必要で、それもあって大学サッカーが盛んだった。ところがJリーグになってから、学歴は関係なくなった。
今、大学サッカーにはオリンピック代表選手もいるけれども、オリンピック代表選手であってもなかなかスターがつくれない状況にあるよね。そこが大学と日本サッカー協会の連携が切れてしまった部分。昔はサッカー協会と大学の距離が近かったのに、今は大学は大学で、となってしまった。だからもっと協会と連携したうえでのスター作りが大切だと思うよ」
――大学を卒業してJリーガーになり、引退してからまた大学に戻って監督になるというケースも増えています。Jリーガーのセカンドキャリアとして、また日本サッカーの選手育成法として大学の監督はどうあるべきでしょうか?
「大卒Jリーガーが引退して大学の監督になっていたとしても、OBとのつながりだけで大学が彼らをプロ監督として迎えることはない。大学の先生というポストとしての受け皿でしかないのではないかと思うね。つまり、組織的にはなっていないということ。ただ、J3や海外で指導者になるより、大学の監督の方が安定していると考えて、今後もJリーガーのセカンドキャリアとして増えてくるかもしれないね」
後編は12月18日に掲載予定です。
1945年7月28日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身の日系ブラジル人二世。コリンチャンスでプレー後、1972年に来日。日本で3シーズンプレーして引退。現在はサッカー評論家・指導者。HC栃木日光アイスバックスシニアディレクター。JAFA日本アンプティサッカー協会スーパーバイザー。また、全日本大学サッカー連盟広報委員としても活動。
【準決勝】
12月16日(水)
13:00 NACK5スタジアム大宮 明治大学 - 関西学院大学
13:00 Shonan BMW スタジアム平塚 国士舘大学 - 阪南大学
【FINAL】
12月19日(土)
12:00 @浦和駒場スタジアム
BS朝日にて生中継も実施。当日には試合以外にも様々な企画も実施予定。
是非、大学日本一決定の瞬間をご覧ください!
なお、全日本大学サッカー選手権大会の詳細は下記にて発信中!
全日本大学サッカー連盟公式HP:http://jufa.jp/
全日本大学サッカー連盟公式Twitter:@JUFA_soccer
全日本大学サッカー連盟公式Facebook:全日本大学サッカー連盟