文=宮内大輔(関学スポーツ)
昨年度のインカレ(全日本大学サッカー選手権大会)決勝の再現となったカード。昨年、流通経済大学に敗戦した悔しさから始まった今の関西学院大学。この敗戦が、関西学院大をここまで強くしてきた。インカレの借りはインカレで返す。並々ならぬ決意と準備を持って選手たちはこの試合に臨んだ。キックオフの前の入場、そして整列時からピッチに溢れる緊張感。そんな雰囲気の中、壮絶な試合の火蓋は切って落とされた。
前半、立ち上がりは関西学院大が主導権を握る。素早い展開で、何度も相手ゴール前に迫っていく。しかし、対する流経大も球際で強さを見せるプレー、そして前線のFW2枚を活かした攻撃で反撃。両チームとも一瞬のミスも許されない、レベルの高い緊迫した試合を見せる。前半、関西学院大はエースFW呉屋大翔が流経大のセンターバック2枚に徹底的なマークに合う。ゴール前を固められてしまう中、2列目のMF出岡大輝、MF小林成豪らとの連携と個人技で打開を試みるも、前半は両チーム1歩も譲らずにこのままスコアレスで終えた。
試合が動いたのは後半。成山一郎監督はハーフタイムにMF福冨孝也とMF小野晃弘を交代させるなど、積極的な采配を見せ試合に変化を与えていく。それまで左サイドで主に勝負していた小林も、ピッチの至るところに顔を出し何度もチャンスに絡むようになる。しかし、先にスコアを動かしたのは流経大だった。70分、一瞬のマークのギャップをつかれ、サイドから崩されて失点。直後、関西学院大はMF出岡大輝に変えてMF池田優真、MF徳永裕大に変えてMF森信太朗を投入。システムも4-2-3-1から、呉屋の後ろに小林と森信を置き、アンカーに小野を配置する4-3-3に近いものへと変更した。「呉屋がマークに合うから、その下のスペースに2枚並べた」(成山監督)。この変化が、成山監督の思惑通りに機能し結果を残すことになる。83、森がボールを持ち上がり、クロス。その先に飛びこんだのは呉屋だった。懸命に伸ばした左足はボールを豪快に捉え、大きな大きな同点弾を決めた。「相手がボールウォッチャーになった瞬間マークを外した。全員の気持ちがつないだゴールだった」(呉屋)。それまで相手DFに封じこまれていた関西学院大のエースが1発のチャンスを確実に仕留めた。
劇的な得点で勝利の行方は延長戦へ。雨が強さを増す中、試合の激しさも熾烈を極める。同点弾で勢いをつけた関西学院大はこのまま97分、ついに勝ち越しに成功した。左サイドからのFK。小野が蹴ったボールに混戦の中、DF米原祐が飛びこみヘディングでゴールに突き刺した。その後、決死の反撃を見せる流経大に対して関西学院大も気迫の守備で対抗する。延長戦に入ってからも2人の交代枠を使う、まさに総力戦で相手の攻撃を跳ね返し続けた。試合はこのまま終了。関西学院大がこの死闘を逆転で制し、準決勝に駒を進めることになった。
近年で3度目の対戦にして、流経大に初勝利。選手全員の気持ちが、必然的に勝利へとつながったのかもしれない。「過去2回の対戦から、流経大の強さが戦う気持ちにあると思っていた。そこで絶対負けずに戦った。失点しても関西学院大は戦い方を変えずに勝てた。この試合は自分達を1枚強くさせる勝利」。主将DF井筒陸也は振り返った。 因縁の相手、流経大を下した関西学院大。次に迎える準決勝は、総理大臣杯(全日本大学サッカートーナメント)決勝で相見えた明治大学だ。悲願のインカレ優勝。そして4冠へ。決勝への切符を掴みとるのは、関西学院大だ。
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