完封達成を喜ぶ鈴木大誠 (中央) [写真]=酒井伸
度胸あふれる筑波大学の2年生センターバックが、“怪物FW”を擁する国士舘大学の攻撃陣を抑え、完封に貢献した。
7日に行われたJR東日本カップ2016関東大学サッカーリーグ戦第6節の国士舘大学vs筑波大学戦。前半の半ばを過ぎた頃、会場のフクダ電子アリーナで戦況を見つめていた観客からどよめきが起きた。
国士舘大の前線にロングボールが供給されると、FW松本孝平と筑波大のセンターバック鈴木大誠が落下点に向かう。DF鈴木の方が優位なポジションを取ったかに見えたが、186センチ85キロの図抜けた体格を誇る松本がフィジカルの強さで鈴木をふっ飛ばし、強引にシュートまで持ちこんだ。2年生ながら筑波大のディフェンスリーダーを務める鈴木は「会場の誰よりも僕が一番衝撃を受けましたよ。今までのサッカー人生でこんなことは初めて」と仰天した様子で、センターバックのコンビを組む小笠原佳祐も「(松本は)ラガーマンみたいでビクともしなかった」と驚きを隠さなかった。
国士舘大の4年生エース松本は、昨季リーグ戦でブレイクし得点王を獲得。並外れたフィジカルの強さや決定力の高さから、各チームの守備陣の間では“怪物”と恐れられている存在だ。昨季を2部リーグで過ごした筑波大にとっては、今回が初めて松本とリーグ戦で相見える機会だったが、松本が前節の試合を欠場していたため、チームとしては「松本さんが出てくる想定はしていなくて、他の選手の対策をしていた」(小笠原)という。
しかし、鈴木だけは違った。「自分の予想スタメンの中には入っていたし、本当に対戦したかったので、むしろ『出てきてほしい』と思っていた」
心待ちにしたマッチアップは、フィジカルで圧倒される場面は度々あったものの、懸命に食らいついた。シュートがポストを直撃するなど運も味方したことで、何とか完封を達成し、チームとしても3-0で勝利。「あれぐらいフィジカルが強くてゴールに向かっていく力のある選手とは初めて対戦したけど、ああいう“個で打開できるFW”は2部にはあまりいなかったので、本当に楽しかった」と振り返ったのは、自身の成長に心から手応えを感じているからだろう。小井土正亮監督も「力のある上級生との対戦を楽しみながらやってくれているのは心強い」と奮闘を称えた。
「後期リーグで対戦する時はもっと戦えるようにしたい。筋トレはもちろんだけど、いきなりあそこまでは鍛えられないので、プレーの読みや反応の良さで勝負したい」とリベンジを誓う鈴木。ただ、けがの影響があった松本はベストコンディションとは言えない状況で、この試合も前日にメンバー入りが言い渡されたばかりだった。大学ラストシーズンを戦う彼にとっても、最上級生としての責任やプライドがある。次回対戦時までには、さらにレベルアップしていることだろう。
初めて臨む関東大学1部リーグで一つずつ経験を積み重ね、逞しさを増している鈴木。この試合で受けた“衝撃”を経て、恐れ知らずの2年生センターバックはこれからどんな成長を遂げるのか。彼らの再戦が楽しみだ。
文=平柳麻衣
By 平柳麻衣